福島県教育センター所報ふくしま No.82(S62/1987.8) -021/038page
〔4〕研究の成果と今後の課題1.理科指導においての研究の成果
2.今後の研究課題
- 事前調査の結果等により補完すべきとした項目A・E・G・Hについて、事前と事後の評価値平均の変容を児童・教師別に見ると、
Aは児童(2.8→3.5)・教師(2.9→3.5)、
Eは児童(3.1→3.7)・教師(2.6→3.3)、
Gは児童(2.9→3.6)・教師(2.9→3,5)、
Hは児童(2.9→3.6)・教師(3.0→3.4)
と、全ての項目が高い伸びを示した。
このことより、評価値が3未満の項目を陥没点としてとらえたので、全ての項目の評価値平均が3以上となった今、陥没点は補完されつつあると考えられる。
- その他の項目において顕著な伸びを示したものに、D「学習することに喜びを抱いているか」とF「問題解決のすじ道や方法などを見通して取り組んでいるか」がある。Dにおいては教師の伸びが目立つ。これは教師側の理科に対する姿勢が研究的になり、今まで以上の指導ができたという自信からきたものが多いと考えられる。数値的に見ると、児童のDが4.2という高い値で示される通り、児童側も工夫された授業に喜びや楽しさを感じていると受けとれる。Fの伸びた要因としては、前段階のA〜D〔学習意志の形成〕とE「目標設定」が達成されたからだと考えられる。あるいは、観察・実験において予想を立てたり、話し合い活動を積極的に行うなどの学習訓練の強化の成果でもあると考えられる。
- 前述以外の項目については伸びが少ないが、これは事前調査の時点である程度高い値を得ていたため、事後調査においてあまり差がでなかった。しかし、これについては十分な成果が表われているものと考えられる。
- 発達段階別に分析してみると、高学年(4、5、6年)の伸びが目立っている。これは、実験の内容が高度になり、論理的な展開が要求される"問題解決型"の学習のため、それに必要なA〜Hの項目を常に意識して取り組んだからだと思われる。一方低学年(1・2・3年)においては、児童側で伸びが見られるが、教師側の評価では伸び悩みが見られる。これは低学年の内容が"問題解決型"というよりは、むしろ"理科を楽しむ、親しむ型"のためであると思われる。
今後、個々の児童の評価の分析を十分に行い、それぞれの個性に応じた指導の方法や、自己教育力を身につける学習を習慣化させるような継続した指導の仕方など、さらに研究を進めていかなければならないと考える。特に、事後調査結果が低い伸び率であった低学年においては、もう一歩踏みこみ"遊び的活動"等を通して一層の「自己教育力」を高める指導法を研究する必要があると思われる。また、低学年から高学年に至る指導過程で、児童の発達段階に応じた指導や評価の方法についても、改善しなければならない問題が多数あるように思う。
(担当 佐藤輝夫)