福島県教育センター所報ふくしま No.83(S62/1987.10) -015/038page
<研修者研究報告>−教育研究法講座 小学校
起こり得る場合を順序よく整理して調べる能力を伸ばす指導
―「場合の数」の指導を通して―
会津若松市立城北小学校教諭 目黒 則雄
1.研究の趣旨
(1) 研究の動機とねらい
日常の具体的な事象を算数・数学の舞台にのせ、分類整理する場合、思いつきや試行錯誤で取りかかるため、落ちや重なりが生じる。例えば、学級三役の役員選挙の際、1票ずつ開票するため、投票総数と開票総数とが一致しない。その結果、開票をやりなおす場面が見られる。
また、50m走のスポーツテストで測定した各個人の記録を分類整理する場合、区間ごとに整理した人数と測定者総数とが一致しない。そのため、記録整理をやりなおすことがある。このように、落ちや重なりが生じるのは、分類整理の観点を設けなかったり、分類整理の手段を用いなかったりするためと言える。観点や手段が欠けていると、筋道を立てて考える働きも生まれてこない結果となってしまう。
日常の具体的な事象に即して、落ちや重なりがないように分類整理して、順序よく列挙することができるようにするため、順列や組み合わせの考えの初歩となる指導の場を設けた。そして、算数科の目標である「日常の事象を数理的にとらえ、筋道を立てて考え、処理する能力と態度を育てる。」に近づくようにさせるとともに、本校の教育目標である「よく考え勉強する子供・根気づよくやりぬく子供」の育成を図るため、本研究主題を設定した。
(2) 問題点
1. 昭和61年2月13日に、5年生39名を対象として実施した「算数学力検査・教研式」の実態は、次のとおりである。
学級 全国 領域 満点 得点平均 段階 正答率 得点平均 正答率 A 数と計算 42 16.9 3 40 18.8 45 B 量と測定 22 5.6 3 26 6.6 30 C 図形 17 10.1 3 59 9.9 58 D 数量関係 18 3.9 3 22 4.1 23 計 99 36.6 3 37 39.4 40 量と測定、数量関係の二つの領域の正答率が、他の領域と比較して低い。特に、数量関係の領域の正答率が低い。
学級全体の正答率は、全国の正答率より低い。2. 日常の算数科授業における学級の実態
思いつきやねばりのない学習が見られるので、小さなミスが目立つ。
ドリルなどの作業的学習は、好んでよくやるが、思考を要する学習になると、苦手意識をもつ児童がいる。
数量のもつ意味やよさに気づく児童が少ない。(3) 原因
1. 児童側
- 日常の事象を算数の舞台にのせ、数理化を図る能力が不足している。
- 数理化を図る方法として、数量化、記号化、図形化、式化などが考えられるが、それらの中で、特に、図形化を用いていくよさをとらえていない。
- 考えることのよさを十分に感じとっていないために、「考えることは苦痛である。