福島県教育センター所報ふくしま No.83(S62/1987.10) -025/038page

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―アイディア紹介―

「教室でもできるホタル幼虫の飼育」

白河市立白河第一小学校教諭

野口 意千朗

1.はじめに

 本校では、福島県土木部河川課の進めている「河川の浄化運動」を受けて毎年、市内を流れる谷津田川にホタルの幼虫を放流している。放流は例年5月に行われるが、その成果が徐々に現れ、夏には、ホタルの飛来するのが観察できる。

 ホタルの飼育活動は、特別理科クラブの子どもたちが中心になって行っており、ここ数年は、飼育の方法が技術的な面でかなり安定してきた。教室でも管理さえ注意すれば、飼育が可能である。

2.白河地方のホタル

 白河地方では、6月下旬から7月上旬にかけてゲンジボタルが、そして、そのあとを追うようにして、8月中旬までヘイケボタルが姿をあらわす。

 最近は、旧市内をとりかこむような形で川原や水田でのホタルの発生報告が聞かれるようになってきた。ただ、ゲンジボタルは数が少なく、ごく一部の地域で棲息しているのみである。

3.ホタルの飼育

 本校で行っているホタルの飼育は、ゲンジボタルの成虫を補獲し、産卵、ふ化させて、その幼虫を翌年の春まで水そうの中で育てあげるものである。一般にホタルの飼育はむずかしいとされている。理由としては環境条件(特に水質)に敏感であること、幼虫の餌となるカワニナの補獲が困難であることが指摘されている。

(1) 産卵からふ化まで

(1)  産卵からふ化まで
 ゲンジボタルの成虫は、6月下旬に補獲できる。成虫は、ごく普通のコン虫飼育箱の中で飼育できる。メスが卵を産みつけやすいように、中にミズゴケをはっておく。

 1匹のメスから約1,000個の卵が産みつけられる。産みつけられた卵は、図のような形でふ化するのを待つ。なお、ふ化までに卵が乾燥してしまうことのないように、時どき、霧吹きなどを使って、全体をしめらせておく必要がある。


(2)  水の管理について

 1. 水質の問題

 ホタルの幼虫飼育には、きれいな水が第一の必要条件となってくる。しかし本校のように高台に位置し、地下水が手に入らない状況では、やはり水道水を使わざるをえない。そこで私たちは、市販の簡易ろ過器を通して鉄分等をとり除いた程度の水を飼育用に使用している。長期問使用するのでフィルターの状態に気をつけてさえいれば、気軽に使用できるものである。
(2) 水の管理について
水道の蛇口にとりつけただけの簡易ろ過器

 2. 温度管理

 幼虫は、水をはったほうろうバットの中で育てられるが、水温が28℃前後になると死滅する。例年、ふ化の時期が夏季休業と重なるため、どうしても管理がゆきとどかず失敗してしまう
ホタルの幼虫
黒いかたまりとなっているのがホタルの幼虫(体長約5ミリ)

 

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