福島県教育センター所報ふくしま No.83(S62/1987.10) -028/038page
か等について文献による理論研究を進めた。ここでの理論は、今後のアンケートによる実態調査によって裏づけられ再構築されていくものである。
1. 「基礎・基本」について「基礎・基本」は、人間の一生を通じての成長と発達の基礎となるものととらえなければならない。そして、それを児童生徒が身につけたとき主体的に生涯学び得る力となるものである。
そのように考えたとき、「基礎・基本」を身につけた児童生徒の姿をなどのように具体化してとらえ、その姿を学習活動を通して具現しなければならないと考えた。
- 基礎・基本の知識・技能が身についている。
- 自分で目標を持ち、計画的に実行できる。
- 直観力や観察力が鋭く、感受性が豊かである。
- いろいろなものの見方ができる。
- 協力してものごとができる。
2. 「個性」について
21世紀の社会を予測するのは困難であり、手本のない時代であると言われている。そのような時代に生きる児童生徒は、自分自身のあり方と生き方を主体的に選択することが必要である。すなわち、社会の変化に主体的に対応できる能力を身につけた未来を切り開く人間の育成が重視されなければならないであろう。このように、将来に向けた教育を考えるとき、一人一人の児童生徒の「個性」を伸長させる教育をすることによって、主体的に創造的に生きることができる人間を育てることが大切になるものと考える。ここに個性重視の原則がさけばれる要因があろう。
児童生徒は、みなそれぞれに、ものの見方、考え方の一つをとっても異なっている。したがって、単に、個人差を無視した画一的な授業をすることなく、個をみつめた授業に改善するなど、児童生徒の持つ可能性をより伸ばすために、児童生徒の持つ「よさ」に着目すべきであると考えるのである。すなわち、どの児童生徒にも他のものと異なるかけがいのない「よさ」を持っており、これが将来生きる根源となるものと考えるのである。そこで、本研究では、「個性」を一人一人が持っている「よさ」としてとらえることにした。3. 「基礎・基本」と「個性」のかかわり
「基礎・基本」は、いずれの人間にとっても必要なものであり、すべての児童生徒に共通に身につけさせるべきものと考えなければならない。しかし、その定着までの過程は人それぞれに極めて多様であるのに、そのことをわきまえず、すべての学習内容を同じ速度で注入的に学習させる画一的な指導では、いわゆる"ついていけない子ども"がでてくるのは当然と言えよう。そこで、一人一人の児童生徒の実態に応じた多様な学び方等を尊重していく必要があると考える。そのためには、一人一人の児童生徒の持つ「よさ」、すなわち「個性」を重視して生き生きと活動させ、その連続の中で、更に「個性」が伸長するように指導法を改善していくことが大切である。そのことによって初めて「基礎・基本」がその児童生徒にとって真に生きたものとして獲得されると考えるのである。
(2) 実態調査1.調査の趣旨
2.調査対象及び人数
この研究の方向づけとするため、現場の先生方が、日ごろ学習活動において「基礎・基本」、「個性」をどのようにとらえ、どのように指導しているか等の現状について調査する。
県内の小学校約350人、中学校約220人、高等学校約210人の教員を対象とする。3.調査の方法
4.調査項目
質問紙法によるアンケート方式を採用する。
なお、この調査は10月中に実施する予定なのでご協力をお願いしたい。
- 現行の学習指導について
- 個人差に応じる指導について
- 個性化を目指す学習形態について
- 教育システムについて
- 児童生徒の実態把握についてなど