福島県教育センター所報ふくしま No.83(S62/1987.10) -029/038page

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プロジェクト研究報告

自己教育力を育成するための学校教育の改善に関する実践的研究(その3)

(科学技術教育部)

中学校における研究実践

  〔1〕教育実践にあたっての基本理念
 中学校教育の目標は自己教育力の理念を内包しており、中学校段階における今日的課題すなわち生徒指導上および学習指導上の多くの困難な問題点は自己教育力を育成するための12の達成目標と極めて密接な関係を持っていると考えられる。

 それ故、個々の生徒に対し、自己教育力の育成のねらいについて教師がこれまでどのようにかかわってきたか、あらゆる教育活動に厳しく反省を加えて新たな具体的対応策を生みだし、日々の教育実践の中で自己教育力の育成をはかって行けばひいては学校教育目標の達成や当面する課題の解決につながるものと考えられる。

〔2〕理科指導での具体的な取り組み

1.事前調査の結果と考察

 本研究の対象である中学1年生の実態はどうであるかを調べるため評定尺度I(所報81号p20)および評定尺度II(評定尺度Iを中学生の立場から自己評価できるように改編したもの)を用いて事前調査を行ったところ、この研究対象学級では自己教育力育成上での陥没点は、項目A(問題意識)項目E(主体的な目標の設定)および項目H(学習結果を次時に生かす)にあることが判った。

 次に、この点を更にはっきりさせるために、上の3項目に事前調査において教師の評価が低かった項目C(困難に立ち向かう意思)と項目L(生きる喜びと充実感)の2項目を加えて新たに理科学習上における自己教育力の評定尺度III(教師による観察評価)と評定尺度IV(生徒の自己評価)を作成し、調査してみた。

 その結果、再びA項目中のA1とA3(問題意識と問題解決への意欲)、C項目中のC2(観察・実験への取り組み)およびE項目中のE1とE2(学習課題の把握と設定)に低い評価が現れ、項目H1〜H3について教師の観察評価に低い数値がみられた。
評定尺度IV
つぎの質問に答えてください。これはテストではありませんので思ったことを正直に答えてください。
質問事項
A A1 あなたは身の回りの自然に目を向け、好奇心や疑問をもったり、「これは問題だ。」などと思ったりすることがありますか。
A2 あなたは授業のはじめの先生の実験(演示実験)や提示された資料から驚きや疑問や矛盾を感じ、「オヤッ!どうしてこうなるのだろう。」と思ったりすることがありますか。
A3 あなたは課題を解決していく過程で新たな疑問がうかび、「これも調べてみよう。」と思うことがありますか。
C C1 あなたは、わからないことがあると自分で観察・実験の計画を立てたり、資料を集めるなどして情報を得て問題解決に取り組むことができると思いますか。
C2 あなたは、問題解決に必要な観察・実験の器具や装置の操作がうまくできない時、時間を見つけて正確に操作できるまで取り組むことができると思いますか。
E E1 あなたは授業のはじめの先生の実験(演示実験)や提示された資料を見て自分なりの疑問点から調べたいことをまとめ、自分の学習のめあてを決めることができますか。
E2 あなたは、課題を解決していく過程で、新たな疑問点がうかんだ時、その中から自分の学習のめあてを決めることができますか。
H H1 あなたは、学習目標や身の回りの自然のしくみを解き明かすのに今まで学習してきたことに工夫を加えて積極的に生かすことができますか。
H2 あなたは、学習態度や自己の学習のめあてが達成されたかなどを客観的に自己評価し、次の学習計画の改善に役立てることができますか。
H3 あなたは、理科の学習を自分の能力や興味・関心に応じて、発展的により深く、広く学習していますか。
L L1 あなたは、理科の学習に興味・関心をもち、意欲的に、しかも成果に喜びを感じながら充実した学習をしていると思いますか。
L2 あなたは、社会問題となっている環境破壊、人口増加、核兵器等を地球全体の問題としてとらえ、自分の考えをしっかりもって生活していると思いますか。

 以上の事からこの対象学級の生徒には、(1)問題意識が低く、困難に立ち向かって行く意思力に弱さが見られる。(2)主体性が弱く、受け身の学習態度が強い。(3)学習課題の把握が不十分なために学習結果を次時に生かし得ない。という傾向がある事が判った。また、生徒個人については、項目によって評価を1とした者が評定尺度II、IVを通して16名もあったので、これを上位、中位、下位に分けて変容を調べることとし、多くの項目にわたって評価を1とした生徒についても追跡調査をすることにした。 

 

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