福島県教育センター所報ふくしま No.83(S62/1987.10) -032/038page
評定尺度IIおよび評定尺度IVでみられた評価1の項目数は事後調査において激減したので、次に評定尺度IVで低い評価をうけた成績上位の生徒(番号1)、中位の生徒(番号2)、下位の生徒(番号3)についてその変容をみてみた。
生徒1はかなり上位の生徒である。評価は全体に好転しているにも拘らず数項目において評価が低いのは自己に厳しい眼を持つためであると考えられる。教師からの評価は高い。生徒2は典型的な中位の生徒で、研究実践授業を通してかなり問題意識が高まり、主体的な活動が目立つようになってきた。生徒3は評価1の項目を多く持つ下位の生徒であったが少しずつ主体性を増し、探究的活動ができるようになってきた。
〔4〕研究の成果と今後の課題
- 教材の分析を通して、教材の精選や個人差に応じた教材の導入に見通しを得ることができた。
- 事象の提示から得た疑問点や発想を取り上げたことによって生徒の問題意識が高まり、発展的な学習ができるようになった。
- 課題設定への取り組みを自己評価させたことで生徒の学習内容に対する興味・関心や課題の把握状況が判り、指導法の改善に役立った。
- 生徒の発想をふくめた創意工夫による教材・教具の開発を指導過程に位置づけたことは、学習内容に対して興味・関心を高め、意欲的な態度の形成につながった。
- 自己診断表の活用により学習課題を明確にとらえ、その解決のために意欲的に取り組む生徒が増し、学習内容の到達度も高くなった。
以上のことから「問題意識をもって物事を見て主体的に目標を設定する」といった学習意志の形成や学習の仕方の習得についてある程度目的が達成されたと考えられる。しかし、学習課題の提示の仕方や把握のさせ方および課題設定時の生徒の意識を見る評価法等について更に研究が必要である。また、生徒が自分の学習の進歩の跡を見ることができ、そして次の学習に対する意欲が生まれるような自己評価の方法を更に工夫したいと考えている。
(担当 上遠野洋明)