福島県教育センター所報ふくしま No.84(S62/1987.12) -027/038page

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プロジェクト研究報告

事例を通した教育相談の進め方に関する研究

―非社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助―

(第2年次)

教育相談部

1.はじめに

 本研究に先だち、当教育相談部で実施いたしました「問題行動の指導に関する調査」において、非社会的行動の今後の動向については、実に約80%の先生方が今後ますます増加するであろうと予測しております。しかし、一方では、非社会的行動をもつ児童生徒は学級の中で目立たない存在であることが多いために指導が後手に回ったり、児童生徒の示す身体症状にどう対応したらよいかわからないという先生方の声も多く聞かれます。

 本研究は、このような先生方の声に応えるため昨年度から2年継続の研究として取り組んでおり、本年度はその第2年次の研究として完結するはこびとなっております。

 また、この研究は、「事例を通した教育相談の進め方に関する研究」の中で、すでに完結した、「反社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助」/紀要第62号、63号)と相互に補い合って一対を成すものでもあります。

2.第1年次研究の概要とその成果

 第1年次においては、特に、非社会的行動についての考え方や種類と内容、実態などを明らかにし、学校における非社会的行動をもつ児童生徒への指導援助の成功事例から、帰納的に非社会的行動の背景、発生のメカニズム、効果的な指導援助のあり方等を追究することに努め、次のような知見を得ました。

(1) 非社会的行動をもつ児童生徒に見られた主な特徴は、身体症状の存在、神経質で積極的に自己表現しない性格傾向、狭い友人関係、自立や人間関係を疎外する親の養育態度である。

(2) 非社会的行動は、幼児期から満たされない人間関係が存在するところへ誘因が作用し、それに非社会的行動に結びつく性格傾向が関係して発生する。

(3) 望ましい指導援助のためには、児童生徒と指導援助者の温かい人間関係を基本とし、資料収集、診断、指導仮説を段階的に踏まえ、非社会的行動の特徴を十分に理解して対応することである。

 なお、詳細につきましては、紀要第70号にまとめてありますので、そちらをご覧ください。

3.第2年次研究のねらいとその実践

(1)第2年次研究のねらい
 第1年次の研究において、非社会的行動をもつ児童生徒への指導援助の成功事例を分析している中で、私たちは次のようなことに気がつきました。それは、どの事例においても、指導援助者たる先生が児童生徒とのラポールを上手に深め、受容的に接したりすることで児童生徒の非社会的行動の改善をはかっていたということです。これは、とりもなおさず、児童生徒の非社会的行動の改善には、指導援助者としての先生のかかわり方が重要な要素であるということであろうと考えます。

 一般的に、このようなかかわり方を、先生方は毎日の指導を通して体験的に身につけてきているわけでありますが、あらかじめこのようないろいろなかかわり方がマニュアル化されていて活用できるようになっていれば、それは非社会的行動をもつ児童生徒への指導援助に大いに役立つであろうと思われます。


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