福島県教育センター所報ふくしま No.84(S62/1987.12) -029/038page
プロジェクト研究報告
自己教育力を育成するための
学校教育の改善に関する実践的研究(その4)
(科学技術教育部)
高等学校における研究実践
〔1〕教育実践にあたっての基本理念高等学校の段階は、中学校の段階に比べて自己主張・自主独立の要求が一段と強くなってくる時期である。したかって、ここでは自主性や個性を重んじながら自己教育力を育成するといった配慮が、きわめて重要となる。自己教育力の育成は個性尊重の教育ではあるが、高校生のまわりには学校生活はもとより、いろいろな集団生活の場があり、各種の集団生活をとおして自己理解を深化させ、自主的に学ぶ力を養うことが可能と思われる。それゆえ、実践にあたっては個人の個性はもちろん、それそれが所属する集団の個性をも十分に尊重し進めるよう、留意する必要がある。
各教科の学習を通しての自己教育力の育成では、生徒個人が学習内容を理解し、学習に意欲を持ち、充実感を持って学校生活が送れるような基盤を、生徒自らの力で養成できるよう指導していくことが肝要であり、授業研究をはじめとする学習指導上の諸問題の研究・教育課程の検討・諸情報の収集など、学校ぐるみの教育活動の見直しが必然的に行われなければならない。また、特別活動においては、いろいろな集団に所属しながら自己教育力を高めていくことが多く、集団相互のかかわり合いを無視することはできず、それらの関連性を十分に考慮する必要がある。具体的な実践にあたっては、生徒一人ひとりの「やる気」をいかに喚起し、それを育て、高めてゆくかということがその中心となるであろうが、自己教育力の育成のための具体的目標が設定され、系統的・組織的教育計画の中で全職員の共通理解に基づいた教育実践が行われるならば、その教育効果も一層期待できるものと考える。
〔2〕工業科(工業数理)の指導を通した実践高等学校では工業、商業の各教科の学習、およびホームルーム活動、生徒会活動を通した研究実践を行った。ここでは、その中の工業科(工業数理)の指導を通した実践について、概要を述べる。
1.事前調査の給果と実践の構想
実践クラス(機械科2年生、4!名)の研究前における全体像を調べるため、評定尺度I.II(所報81号P20、P21)、評定尺度III.IV(評定尺度I.IIを実践領域の段階におろしたもの)により事前調査を行った。調査の結果、要素D(学習への喜びや満足感)、F(問題解決へのすじ道や方法を考える)、G(問題解決への創造工夫)、H(学習した結果を次の学習に生かす)が陥没しており、補完の必要性のあることが認められた。このため、実践の構想として、各授業時間の中に追究の手だてを講じることはもとより、それ以上に課題を解決するまでの過程を重視して、グループによる課題研究的作業を行わせ、陥没要素の向上を図ることにした。