福島県教育センター所報ふくしま No.85(S63/1988.2) -007/038page
が全体の約60%と多くなっている。このことは、教科担任制を採っている中学校では当然のことと思われる。この場合、研究推進の特に計画段階における各教科の共通理解の図り方については、細心の配慮が必要であろう。
道徳については、小・中学校ともにわずかではあるが増加傾向がみられ、豊かな心や道徳的実践力の育成が重視されていることが分かる。だが、中学校では全体の4%前後と特別活動より少なく、今後、生徒指導と関連させた研究がもっと多くなることを期待したい。特別活動については、小学校は増加しているが中学校は逆に減少している。体験を通した自主性の育成など課題は多いようである。
生徒指導については、特に中学校が全体の約17%と多く、問題行動への対処とともに望ましい生活態度の育成などが切実な学校課題となっていることがうかがわれる。また、小学校では、62年度には60年度の%に激減している。「いじめ」などの沈静化はあると思われるが、援助指導としての教育相談に関する研究なども必要だと思われる。さらに、小・中学校ともに、「不登校」などの新たな問題が現出していることを考えると、毎時の授業と結びつけた生徒指導など新しい視点からの研究が強く望まれる。領域全体として、学校経営に関する研究が極めて少ないことは残念である。学校における教育活動の基盤は望ましい学級づくりにあることを思えば、学年・学級経営に関する研究がもっとほしいように思われる。
(2)研究のねらいと内容について
表2 研究のねらい (S.62) ねらい 校数 ねらい 校数 小学校 中学校 小学校 中学校 学習意欲 60 64 国語力 94 0 自ら学びとる力 43 27 自主、自律、実践力 47 23 主体的学習態度 35 39 問題解決力 42 0 基礎・基本・基礎力 34 11 探究力 27 0 学ぶ喜び・楽しさ 29 8 体力向上、運動能力 19 1 学習のし方 15 2 造形表現力 15 0 機器、資料の活用 12 2 生活習慣 7 13 個への働きかけ 10 14 評価 4 1 やる気 0 5 その他 58 37 研究のねらいでは、共通するものとして「学習意欲」や「自ら学びとる力」「主体的学習態度」など、いわゆる自己教育力の育成に関するものが小・中学校ともに多くなっている。また、小学校では、「基礎・基本」の定着、中学校では、「個」への対応や「基本的生活習慣」の定着などが比較的多いことが特徴としてあげられよう。
研究のねらいは研究課題の解決をめざすものである。したがって、学校教育目標とねらいとの関連を図ることが大切であり、児童生徒の実態をもとに教育目標の具現化を意図したものにすることが最も重要であると考える。研究の内容については、「……指導」「……の指導はどうあればよいか」といった指導法に関するものが、小・中学校ともに圧倒的に多くなっている。
表3 研究の内容 (S.62) 研究内容 小学校 中学校 校数 % 校数 % 指導法の研究 360 65.4 153 61.9 授業の工夫・改善 96 17.4 42 17.0 めざす子どもの育成 74 13.4 33 13.4 その他 21 3.8 19 7.7 このことは、めざす子どもを実現するために、毎時の授業に、どのような工夫・改善を施せばよいのかなど、教科の特性に合った効果的な指導法の確立を現場教師が最も切望していることを示しているように思われる。
2.今後の課題
研究主題設定にあたって、今後、次のようなことを大事にしていきたいと考える。このような視点から、自校の研究主題についてもう一度見直しをお願いしたい。
- 学校教育目標(特に年度の重点目標あるいは努力事項)との一体化を図ること。
- 「個性」「創造性」「情報活用能力」「国際理解力」など、将来を見通した今日的課題に十分配慮を加えること。
- 児童生徒の実態を広く探り、教科に偏ることなく多面的な研究が継続できるようにすること。
- 研究のねらい、対象領域の限定、方法(手だて)の具体化の3要素を明確に焦点化すること。
- 全職員の確かな共通理解を図り、一人一人の自己啓発的な研究が触発されるようにすること。