福島県教育センター所報ふくしま No.85(S63/1988.2) -023/038page
<アイディア紹介>
「多様な動きの場づくりによる学習の個別化を追求する指導」
―2年生の鉄棒あそび―
いわき市立勿来第二小学校 教諭 櫛田 昌平
1.はじめにひとりひとりの子どもに対応した指導ができれば理想である。しかし、これはむずかしい。
どうしても、平均的な対応とならざるを得ない、そこには、大なり小なり、両端に不満が残る。学級というわく組みでの指導では、共通的に言えることである。体育の学習は、身体活動をとおしておこなわれるという特質をもっているから、ひとりひとりの学習状況がみやすい。だから、時には、ひとりひとりへの対応が可能になるのではないかと考えられる。
2.多様な、子どもの動きの実態2年のS君は、4月、横浜市からの転入児である。明かるく活発で元気な子どもであるが、学校の固定施設での遊びにとまどっている。
登り棒、雲梯での体の支え方と移動、高所での身体支配、タイヤとびのタイミング、鉄棒上のバランス、逆さ感覚等がないらしい。元気なS君は都会育ちで、このような生活経験をしてこなかったようである。S君のような子は、特別であるにしても、これに似た子は学級の中に必ず何人かいるのが、一般的な実態である。
S君のような子から、身体的な問題をもつ子、さか上がりを苦もなくやってのける子まで、子どもの動きの実態は、多様さをもっているのが現状である。3.多様な動きに対応する指導の取組み
ひとりひとりの子どもの動きをもとに、どの子も、自分のできる、できそうな運動を設定してやることは、低学年の体育にかぎらず、積極的な学習への取組み、学習の喜びを体得させる指導の展開をはかる重要なきめ手である。運動内容の設定に当っては
がポイントで、年間の限られた時間の有効な使い方、動きの幅を広め、質的向上をめざす授業づくりの基本的な手段である。
- 子どもの動きの実態から、子どもができそうな運動を、自由に選べるように、運動のしかたと、場を設定する。
- 運動の特性を失なわず、運動の内容に、上下の区別をつけない。
- 学校の設備、施設をもとに、簡単に設定できること。
<施設を生かした運動の場作り>
- A〜Gは、運動のしかたを図示し、移動できるようにした。
- 1間には、3〜4名とし、運動している子の動きを見たり、補助をしたりさせての助け合