福島県教育センター所報ふくしま No.85(S63/1988.2) -027/038page

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プロジェクト研究報告

自己教育力を育成するための学校教育の改善に関する実践的研究(まとめ)

科学技術教育部

はじめに

 昭和60年10月以来、約2年余り、自己教育力育成に向けて「自己教育力が備わった状態像」の設定のための理論研究に始まり、これをもとに研究協力校10校(小学校3校、中学校3校、高等学校4校)の協力を得て、望ましい状態像から見た陥没要素の把握を行い、更にその原因を明らかにするため、各教科及び特別活動等において細分化した調査等を行って、具体的な欠落部分を明確にしてきた。

 そして、この結果をもとに「補完・強化するための手だて」を各実践校の実態に応じて作成し、計画的・継続的に教育活動を行ってきた。第1年次における実践状況については、本稿(その2)から(その4)に詳述してきた。

 ここでは第2年次の研究実践の状況と、2年間にわたる研究全体のまとめを述べることにする。

〔1〕個を中心とした自己教育力を育てる研究実践

 学校又は学級での、いわゆる集団としての傾向をつかみ、それに対する指導の方法を見い出し、実践した結果は、先に述べたように(所報82号参照)一応の成果を得た。この中で小集団又は個人を対象にした分析研究については、データとしては収集しても、具体的な指導実践は不十分な面があった。そこで第2年次は個々の児童・生徒に視点をあて、データの分析に基づいた実践研究をすすめることとした。

 すなわち、61年度に得られた調査結果の個人分析を行い、傾向の類型化をもとに次のような児童生徒を押出した。

(a) 12要素(自己教育力が備わった状態像)の総計が、事前、中間調査とも低い状態を持続している児童・生徒
(b) 12要素の総計が、高い状態から低い状態に変化した児童・生徒
(c) 12要素の総計が、低い状態から高い状態に変化した児童・生徒

 自己教育力を高める手だてとして、多くの児童生徒に有効であったものが、ある児童・生徒にとってマイナスの作用をしたり、全く効果をあげていないのは、その児童・生徒の側に受け入れられない何か要因があったのではないかと考え、児童・生徒の性格的要因と環境的要因を分析することからより効果的な手法を探ろうとした。

1. 性格的要因の分析

 性格的要因を明らかにするため、標準化された検査としてのYG性格検査を基本的調査として、すべての抽出児童・生徒に行った。

図―1 YG性格検査プロフィール(例)
図―1 YG性格検査プロフィール(例)

 図1のようなプロフィールを得た中学校3年男子の例では、不安傾向や不適応傾向を更に調べるため、不安傾向診断検査(GAT)と問題性予測検査(DAT)を行い、「対人不安傾向」が危険地帯にあり、また家庭不適応が非常に高い状態にあることを明らかにし、自己教育力育成のダイヤグラムとの関連を考察するようにした。


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