福島県教育センター所報ふくしま No.85(S63/1988.2) -028/038page

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2. 環境的要因の分析

 児童・生徒をとりまく環境条件、すなわち、家庭環境、地域環境、学校、人間関係などさまざまなものを、それぞれの学校における「児童(生徒)理解個票」とか「環境調査票」、更に先にあげたDATなども活用し、明らかにするよう努めてきた。

 更に、C型の児童・生徒、すなわち集団に対する自己教育力育成の手だての実践の中で、大きな成果のみられた児童・生徒の性格的要因及び環境的要因を明らかにすることから、個を高める有効な手だてが得られるのではないかと分析・検討を行った。

 これらの要因分析の結果、次のような追究の手だてに関する視点を得ることができた。
  1. 自己教育力の高まりは、知能偏差値や学力の高さとは必ずしも一致しない。それらが低い児童・生徒であっても、学習意志が形成されたり、学習の仕方が習得されたり、生き方について深い探求心をもつことは十分期待できる。
  2. 性格検査による類型と高く伸びた児童・生徒の間には明確な、直接の関連を認めることはできなかったが、次の点に配慮すべきである。
    • 情緒的な不安定は必ずしもマイナスとなっているわけではない。むしろいくらかの不安傾向をもつこと、すなわち安定した心境にどっぷりとつかっていない方が、自己教育力を高める上では有効である。
    • 一人ひとりのもつ性格的特性を長所としてとらえ、それを生かしながら陥没要素の補完強化の手だてを工夫する。
  3. 環境的要因の中では、とくに人間関係に配慮することが大切である。この場今も安定した環境だけをよしとするのではなく、さまざまな葛藤場面や逆境をも、自己教育力を育てる良い機会ととらえるべきである。

 以上のような基本的な取り組みの中で、個を中心とした自己教育力を育てる研究実践が行われた。その実践状況については、本年度末に発刊される最終報告書にくわしく述べてあるので、参照していただきたい。

〔2〕研究のまとめ

 小学校・中学校・高等学校におけるそれぞれの研究成果については報告書に詳述することとしてここでは全体についてまとめることとする。

  事前調査(61年6月)において明らかとなった学年進行とともに低下する傾向にあったL(生きる喜び)やC(努力し続ける強い意志)の要素は図―2の1、2(丸囲み数字)に見られるように全体的に向上の様子がみられた。

図―2 評定尺度IIによる学年ごとの変化
図―2 評定尺度IIによる学年ごとの変化


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