福島県教育センター所報ふくしま No.86(S63/1988.6) -003/038page
てみる。
国際交流の活発化は,それぞれ各国の政治的・経済的利益を促進するばかりでなく,環境破壊・環境汚染・資源枯渇が地球規模で進行しつつある事態の中で,いまや問題の解決は国益や国の立場を超えた次元で図るしかないことがしだいに認識されるようになってきたことも一因である。
行動ルールの国際的共通化・互換性が実現するには,各国間における相互理解と文化の違いや国益を超えての相互協力を欠くことはできない。日本も国際社会の中で孤立しないで繁栄を続けていくためには,当面さまざまな摩擦を解消する努力を重ね,一方では長期的展望のもとに,国際社会に通用する日本人の育成を図ることが不可欠である。(上掲引用文につづく。)(下略)
(3)もともと「国際化」という言葉には二つの意味がある。と小林哲也氏は言う。氏のこの言葉は,新教育社会学辞典(東洋館出版社、1986年版)の国際化と教育の項に述べてあるが,抄出して筆者なりに要約することを許されたい。それはつぎのようになる。
国際化という言葉には,物事を一国内に限らず他国とかかわらせるという意味が含まれる。その意味では,外国人教師の雇い入れ,留学生の派遣,外国教育理論や実践の導入などを明治以降一貫して進めてきた我が国の教育は国際化していたということができよう。ただしその国際化の動機はあくまでも日本の国益のためであった。今日では、このあり方はのりこえられなければならない。そのためにはもう一つの「国際化」の意味を考える必要がある。それは,各国家,国民の間にそれぞれが世界社会の一員であるという共通意識が存在し,それぞれが世界社会に参加するということである。
というのである。国際化において,国益を全く無視するというのではあるまい。しかし国際社会の共栄のためには一国の国益が際限もなく追求されるものであってはならないことは当然であろう。
(4)国際化は今日はじまった社会現象ではないが,今日における国際化は(2)において述べたような特色をもつものであると押さえるべきであろう。そうしてこのような国際化において国際化が望ましくあるための人間資質の育成の問題が問われることになる。このことはまさしく教育の課題でなければならない。
2.国際化と教育
(1)教育は人格の完成をめざすことが大眼目であるが,そのためには,人格の資質内容が全面的に調和的に発達するように援助しなければならない。この人格の資質内容と国際化はどのようなかかわりを持つであろうか。
山田栄先生(本県出身本邦有数の教育学者)は人格の資質内容を次のように説かれる。すなわち、個人的資質・社会的資質・職業的資質の三つに大きく分類することができ,とくに社会的資質の中には,家庭的・一般社会的・国家的・国際的資質が含まれている。と言われる。国際化は,この国際的資質にかかわると見ることができるものである。国際的資質は、私見を述べれば、国際生活を正しく実践できる資質であり,他の各資質と同様に,そのために必要な知的・技能的・情意的・身体的諸能力を内包しているのである。このようにして,国際化は,今日の国際生活を正しく実践できるための人格の資質内容の一つの機能的要件として位置づけられるものであると言うことができる。それは現実の国際化現象に正しく対処できる,また正しく自らを国際化することができるよう上述の諸能力を発動するのでなければならない。このことを発達段階に即して援助するのが教育である。この際とくに述べなければならないことは,国際化の問題は,人格の完成をめざす教育の一つの,しかし,不可欠の部分である。言いかえれば一つの契機である。しかし,国際化にかまけて教育の全体への目くばりをおろそかにしてはならないことは言うまでもない。ということになる。
(2)臨時教育審議会は,時代の変化に対応するための改革の第一に国際化への対応の問題を終始とりあげたのであるが,今日における国際化は,明治