福島県教育センター所報ふくしま No.86(S63/1988.6) -006/038page

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所員個人研究−(小学校学習指導・国語)

「表現」と「理解」を関連させ,相互の能力の育成を図る説明文の教材研究

学習指導部  田 中 靖 則

1.はじめに

 社会の情報化が進み,現代社会に主体的に対応できる児童の育成は,国語科においても急務の課題である。目につく文章のほとんどは論理的文章であり,その内容を的確に認識するカ.判断するカ,表現するカを育てることの必要に迫られている。

 論理的思考力を育てる国語科教育という点から「説明文」の指導の重要性が改めて認識されなければならないと考える。説明文の中に盛られている情報としての価値と内容を的確に認識させ,その認識をもとにして,児童自らが情報の提供者として主体的に表現させていこうとするところに今日の説明文指導の意義があると考える。

 情報認識のカと情報提供のカ,すなわち理解力と表現力を育てることは,とりもなおさず児童の言語能力を育てることであり,それらを密接に関連づけて学習を進めさせることによって児童の学ぶ意欲も醸成されていくのである。

 本研究は,児童がこのような学習を進めるために,指導者はどのような手立てを溝じなければならないか,とりわけ,教材研究の在り方を中心にまとめたものである。

2.説明文を読むことの意義

(1)説明文の価値

 説明文が国語科で取り扱われる価値は,これまで次のようなとらえ方であったろう。

  1 児童に知的感動,情報をあたえる文章である。

  2 論理的文章の読解能力を養う文章である。

 ここで,見逃してならないのは.教材としての説明文は,児童にとって「論理的な文章表現力を養うための模範的な文章である。」ということである。つまり,情報を認識することと情報を提供することの必要性を兼ね備えた価値を含む文章であるということである。

(2)説明文指導のねらい

 説明文に盛られた情報を認識させるだけにとどまらず,その認識の中から児童自らを情報の提供者としての立場に立たせて読み進めさせるならば,受動的な理解に終わることなく,情報提供者としての主体として緊張と意欲を伴った学習が展開されるであろう。このような観点から説明文指導のねらいを次のように考えてみた。

  1 児童の知的好奇心を喚起し,知的感動を与える。

  2 思考力,類推力,想像力を育てる。

  3 理解の基礎・基本となる技能を養うとともに,盛られている内容についての価値認識を高める。

  4 表現の基礎・基本となる技能を養うとともに,認識された内容と価値をもとに表現させる。

(1)<表現領域の指導事項> 表現ク

 説明文を読むことの価値を認識させ,ねらいを達成させるために,表現と理解の能力を育てながら相互に関連させるような指導を考えていかなければならない。学習指導要領に目を向けると,理解と表現が密接に関連する指導事項を見出すことができる。

学年 理解から→→→→→→→→→→表現へ
3年 聞いたり読んだりした内容から 素材を見つけ出して書く
4年 聞いたり読んだりした内容から 素材を選んで書く
5年 聞いたり読んだりした内容から 素材を選んだり,文章の書き表し方を参考にして書く
6年 文章や話の内容を 要約して書いたり,敷衍して書いたりする

 ここに見る特色は,「聞いたり読んだりした内容」(理解)から,「素材をとらえて書く」(表現)という表し方になっている。すなわち,認識


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