福島県教育センター所報ふくしま No.86(S63/1988.6) -009/038page
所員個人研究−(小学校学習指導・理科)
透明水槽の製作とそれによる発芽実験
科学技術教育部 野 地 敏 明
1.はじめに
小学校5学年「生物とその環境」では,植物の発芽及び成長の様子を調べ,植物は環境の影響を受けて成長していることを理解させるのがねらいである。しかし,ここでは対象が生命体であることから実験の条件設定が難しく,実験・観察の結果も予想通りにでないことが多い。また,観察は長期にわたるので,従来の方法では問題解決に対する意欲も失われがちである。
そこで,発芽実験等で観察に有効な透明水槽の製作とその活用法及び指導法について述べてみる。
2.透明水槽の製作
薄型の透明水槽はすでに市販されているが,アクリル板を使ってこれを簡単に自作することができる。アクリル板は,透明度が高く,切断,変形,接着が簡単であり,この自作の透明水槽は,使用目的に応じて多用に使用することができる。
(1) 材 料
アクリル板A 200o×300o(厚さ 2o)1枚
" B 160o×195o(厚さ " )1枚
" C 30o×200o(厚さ 3o)2枚
" D 30o×507o(厚さ " )2枚
(2) 製作の手順
1 プラスチック折り曲げ器等を用いてアクリル板Aを中央部点線に沿って折り曲げる。
2 アクリル坂Aの両端にサンドペーパーをかけ,アクリル坂Cを接着する。
※ 接着するときは,注射器を用い,接合部に隙間ができないようにしながら塩化メチレンを流し込む。1分程で完全に接着できる。
3 アクリル板Cの底部にそれぞれアクリル坂Dを接着する。(図2)
4 アクリル板Bの角をサンドペーパーでまるめ,仕切り板とする。
3.透明水槽による発芽実験
児童は,第4学年までにアサガオ,ヒマワリ,ヘチマ,ジャガイモなどの栽培を通して日光や温度によって成長に違いがでることを学ぶ。第5学年「たねの発芽〜植物の成長」では,種子の発芽やその後の成長に影響を与える環境条件をモデル実験等を通して探らせ,環境に微妙に反応する生命体としての植物の姿をとらえさせることをねらっている。
発芽実験には,一般にインゲンマメやトウモロコシの種子が使われているが,次の理由からエンドウの種子を用いるのが効果的だと思われる。
・ 栽培が容易で,短期間に発芽・成長する。成長の逢いを葉の数や葉の色,根・茎の伸び具合で判断できる。
・ 発芽温度が低く,恒温器などを使用しなくともすむ。