福島県教育センター所報ふくしま No.86(S63/1988.6) -011/038page

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発芽時の温度を調べておくことが必要である。

(3) 種子の発芽と空気

 発芽には空気が必要であり,空気が十分に与えられないと,呼吸が阻害されて正常に尭芽が進行しない。ところが子どもたちにとって空気は常に身の回りに存在しているため,発芽に空気が必要なことを気付いてはいない。

 そこで,このことを理解させるために,(1)発芽と水 で述べたように水の中に種子を沈めたり,バーミキュライトや寒天培地に深さを変えて植え付けたりして,空気の存在しない状態では発芽しないことを経験させる必要がある。

 1 実験の方法

 十分に吸水させたエンドウの種子を寒天培地やバーミキュライトに深さを変えて植え付け,発芽と空気の関係を調べる。

 2 結果と考察

図8

 

 左図はエンドウの種子をいずれも前日から水に浸しておいたものである。これらを寒天培地やバーミキュライトに深さを変えて植え付け,室内に設置しておくと,浅く植え付けたエンドウの種子からは3日日あたりから幼根が伸び始め,7日日には幼芽も出てきた。深く植え付けたエンドウの種子は変化が見られなかった。


 この実験から児童は,空気がなければ発芽できないことを理解することができる。また,花檀や畑の土の中にも発芽に必要な空気があることを推論したり,田畑を耕す必要性に気付くことができるであろう。

 この実験セットを導入の事象提示として用いると,寒天の中や深い土の中ではなぜ発芽しないのかという問題意識を児童に持たせ,この問題を追究するために様々な活動を促すことができる。

(4) 種子の発芽と光

 多くの種子は,発芽の必要条件すなわち水,温度,空気の三つの条件がそろうと,光の有無に閑係なく発芽する。

 ところが,種子によっては,これらの三条件が満たされても光が照射されないと発芽が起こらないものもあったり,またこれとは逆に光によって発芽が阻害され,暗黒中のほうがかえってよく発芽する種子もあったりする。

 小学校5学年の指導に当たっては,このような特別の種子を用いずに,発芽の三条件のみで発芽する種子を用いたほうがよいと思われる。

 日光や土(肥料)がどのような影響を与えるかという問題については,この後の植物の成長のところで追究していく。

3.おわりに

 ・ エンドウは,栽培が容易で他の種子に比べ発芽・成長が早いので,「たねの発芽とつくり」の学習にはたいへん適した教材である。一般の児童実験では,有胚乳種子,無胚乳種子等いろいろな種子を用いて実験・観察が行われているが,よい結果の得られやすいエンドウの種子を用いるのが効果的であると思われる。

 ・ 透明水槽による発芽実験は,幼芽ばかりでなく,幼根の成長変化もよく観察できるので,演示実験のみならず児童実験にも効果的に使用することができる。

 尚,この透明水槽は,発芽実験のほかにメダカの観察,物の溶けかた,対流実験,光の屈折等の実験・観察器具として幅広い用途を持つので,たいへん便利である。

参 考 文 献

・ 小学校指導書 理科編 文部省

・ 発芽生理学 中山 包 著(内田老鶴圃)

・ 実験植物生理生態学実習 田口亮平・田崎忠良 著(養賢堂)

・ 理科の教材研究と授業過程1.生物とその環境 武村重和・森川久雄・君塚六郎 編(明治図書)

・ 小学校理科 2.新しい「生物とその環境」の指導 武村重和 編(明治図書)

・ 昭和59年度 全理セ研究発表収録「多目的水槽の製作と活用」埼玉県教育センター 古田 進


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