福島県教育センター所報ふくしま No.86(S63/1988.6) -012/038page

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所員個人研究

教育相談におけるSCTの活用

−SCT反応にみる不登校生徒像−

教育相談部 菅 井 一 良

1.研究の動機

 昨今の生徒指導をみると,開発・予防的アプローチの重要性が叫ばれている。いわば積極的生徒指導である。

 社会環境や家庭環境の急激な変化に対応できず心身にさまざまな歪みを生じ 問題行動を起こしている児童生徒数は増加をたどっている。潜在的な反社会的,非社会的行動をもつ児童生徒,いわば予備軍の数も相当数にのぼるとの報告もある。

 しかし,現実には,児童生徒一人ひとりの性格や心の状況をとらえることは容易なことではない。そこで簡単に,しかも短時間で児童生徒理解の糸口を与えてくれる心理検査があったらと思ったのが,SCTに目を向けた動機である。

 本研究では,SCTを使って不登校生徒の実像を浮きぼりにし,開発・予防的教育相談に生かしていきたいと考えた。

2.SCT(エスシーティー)とは

SCT(Sentence Completion Test)とは,文章完成法検査のことである。

1.小さいとき私は〜〜 13.私の失敗は〜〜
2.ご飯のときは〜〜 14.お父さん〜〜
3.弟は〜〜 15.私のできないことは〜〜

 〜〜〜の部分に,続けて思いつくままに自由に文を綴る,投影法による心理検査である。

(1)SCT活用の効用(学校場面)

・ 日々成長,発達し変わり得る子どもをとらえることができる。

・ 短時間に,多くの児童生徒のパーソナリティーを広く知ることができる。読み方によっては,深く多面的にとらえることもできる。

・ 検査されているという意識を与えず,多くの情報が収集できる。

・ 集団検査,個人検査ともに可能であり,さらに実施方法も簡単である。

 (2)SCT分析内容

決定要因 環境的要因 社会的 社会・経済的地位,生活水準,社会生活,職場の人とのつながりなど
家庭的 家族,生育歴,家庭の雰囲気,父・母のパーソナリティ,しつけなど
個体的要因 健康,容姿,容貌,体力,運動神経など
パーソナリティの内容 力動的側面 その人が住んでいる心理的世界の安定−不安定の度合い攻撃,劣等感,合理化,逃避,コンプレックスなど
指向的側面 その人が生きようとしているもの 価値観,生活態度,人生観など 気質→習性→態度→価値観
情意的側面 気質→性格などの情意的側面のうち,比較的固定的なもの,性格類型など
能力的側面 1 知能,知的作業の能率IQ 
2 人間らしい頭のはたらき,精神的分析,洞察,見通し,評価の客観性など

3.研究の内容と方法

 (1)対象児

・ 当教育センターに来談した不登校の中学生男子(7名)女子(5名)

 (2)実施方法

・ 数回の面接後にSCT検査を行い,問親点を把握し,面接過程でそれを確認した。いわば,面接の補助的手段として活用した。

4.研究の実際

 不登校生徒のSCT反応から,次のような生徒像がわかった。

 (1) パーソナリティーの内容(能力的側面)

1 知能,成績とも優秀な生徒が多い。しかし何かにこだわり感情的に高ぶっているためか,現状としてはdiff(視野や見通し)が狭くなって


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