福島県教育センター所報ふくしま No.87(S63/1988.8) -005/038page

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所員個人研究

‐コンピュータ支援学習とCAIコースの開発‐

科学技術教育部  遠 藤 二 郎

1.はじめに

 社会の情報化がますます進展するなかで,臨時教育審議会や教育課程審議会では,情報化への対応を大きく取り上げ,21世紀に生きる子供達にコンピュータリテラシー(読み書きと同様の基本的能力)を身につけさせなければならないとしている。学校教育の情報化への対応の具体策としては,コンピュータを授業で活用しながら,リテラシーを高めることが考えられている。このようなことから,今後は,コンピュータ支援学習についての理解を深め,授業の中でコンピュータを積極的に活用できるよう,配慮していかなければならない。そのためには,コンピュータの機能やCAI(ComputerAssistedInstruction)の特質を理解し利用目的を明確にするとともに,教材(コースウェア)が,指導目標や児童・生徒の実態に即したものであることが大切である。

 本研究は,CAlの考え方,コースウェア開発上の留意点及び作成法,コースウェアの作成とその評価等について検討を加えたものである。

2.コンピュータの学習指導への利用

 コンピュータを学習指導に利用する場合,その機能が児童・生徒のどのような能力を高めることができるかを押さえておくことが大切であり,これについて表−1に示した。

3.CAlについて

(1)CAIの利用の形態

 CAIは,一般的には,コンピュータの助けを借りた授業を指している。考え方には次の4つがあげられている。

1 教材提示や実験・実習方法の説明など,教師の教授の助けに使う。

2 児童・生徒がコンピュータを使って,自分の能力・特性に合せて自主的に進める個別学習。(個々の児童・生徒への対応)

3 児童・生徒が問題解決の過程で,主体的にコンピュータを解決の手段の一つとして利用する。

4 測定器などの教具として利用する。

表−1 コンピュータの機能と育成できる能力
コンピュータの機能 育成できる能力等
1.計算機能 ・計算力・分析能力・仮説の検証・解釈力
2.文書・図形の作成編集 ・創作力・創造力・構成力
3.シミュレーション機能 ・モデル化・検証・予測能力・思考力
4.即時応答能力 ・学習の定着・理解力・学習意欲
5.反復再現性 ・技能・理解力
6.検索・照合機能 ・情報検索能力・情報収集,分析,整理,処理能力
7.論理的制御機能 ・論理的思考力・アルゴリズム・予測能力
8.情報蓄積・管理機能 ・情報収集,整理,分類能力
9.情報蓄積加工と推論 ・構想・要約能力・仮説形成能力・推
10.情報伝達・通信機能 ・表現力・情報収集・通信技能・コミュニケーション

 コンピュータの利用には,主に次のようなものがある。文書作成・データ処理・デザイン・作図・設計製図・作曲・自動演奏・測定・制御実習・パソコン通信など,その利用範囲は広い。また,小学生の論理的思考力を高めるLOGO言語などの言語教育。学校図書館の文献検索の支援や.調べ学習などの情報検索に用い,児童・生徒の主体的な学習を助け,自己教育力・情報活用能力の育成を図る,などが考えられている。

 フレーム型(学習のステップごとに画面を表示する)CAIのコースウェアには,<1> ドリル型(問題を解くことによって,学習内容の定着を図る)<2> チュートリアル型(コンピュータがチュータになり学習を進める。個に応じた学習・主体的学習)<3> 提示型(教材提示・フラッシュカード・演示等)<4> シミュレーション型(疑似体験・実際に見ることができない事象をモデル化して表わす)<5> 情報検索型(学習情報の提供・図書検索の支援・資料調べ・学習情報の検索)などがある。


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