福島県教育センター所報ふくしま No.87(S63/1988.8) -008/038page
−所員個人研究−(中・高等学校社会)
学習適正に応じたコース別社会科学習
学習指導部 深 澤 陽 一
1.はじめに
これまでの授業実践をふりかえるとき,社会科において,一人一人の生徒の違いを意識した取り組みはあまりにも少なかったのではないかと思われる。そこで,生徒の違いに応じて,その違いを伸ばすことのできる授業の創造が大きな課題となっている。この小論は,この課題に答えるべく行った,福島県立福島東高等学校での地理の授業実践の報告である。この授業実践を通して,具体的な授業手法を検討し,社会科の授業における有効牲を探ることを目的としたものである。
2.授業実践テーマの視点
この実践では,次の2つの視点を定めた。
(1)生徒一人一人の学習に対する適性を把握し,生徒の通性に応じた学習コースを用意して学習させる。
(2)コースに応じた学習パッケージによって,学習のすじみちを明確にし,生徒が自ら学習に取り組めるようにする。
学習に対する適性(学習適性)とは,ある知識なり技能なりを獲得するのに必要とされる学習者の特性・能力である。
学習者は,考え方や感じ方や働き方は一人一人違うのであるから,学習目標は同一であっても,それを達成するために最適な学習方法は,学習者の考え方や感じ方や働き方(学習適性)によって異なると考えられるので,学習適性に応じた学習方法を工夫すれば,生徒は自分に合った方法で主体的に学習に取り組めることになる。
今回の実践では,学習適性の中で社会科に大きな関連のある,思考の進め方の違いと学習材に対する好みの違いを取り上げた。
思考の進め方については,演繹型と帰納型,直感型と反省型に区分した。
演繹型は,すでによく知られている原理を特殊な場面に通用する形で問題を解決するのが得意であり,帰納型は,特殊な場面から,あるいは個々の観察とか実験の結果から原理や法則を導き出すという形で学習する方が能率が上がると言われている。
直観型は,問題場面に出あったとき,筋道を立てて理詰めに考えないで,ぱっと答えを思いついたり判断したりする。反省型は,問題場面の条件を調べ,自分の考えが良いか悪いかを反省しながら考えを進めると言われている。
学習材については,視覚教材のうち地図の記号等の情報からイメージ化のしやすい記号型と,文字からの方が概念化しやすい文字型に区分した。
これらの学習適性に応じた型の組み合わせで8種類のコースを設定し,それぞれを学習パッケージにして学習の筋道が生徒にわかるようにした。コースの型の組み合わせは次の通りである。
A 演繹型 直感型 記号型 E 帰納型 直感型 記号型 B 演繹型 直感型 文字型 F 帰納型 直感型 文字型 C 演繹型 反省型 記号型 G 帰納型 反省型 記号型 D 演繹型 反省型 文字型 H 帰納型 反省型 文字型 3.授業実践計画
授業を実施するにあたって,次の(1)〜(9)を作成した。紙面の都合で一部を示すにとどめる。
(1)小単元名 村落と都市
(2)趣旨(略)
(3)小単元目標(略)
(4)単元の授業計画(5時間)<表1>
(5)イメージ調査票(略)
(6)学習コース選択禍査票(略)
(7)コース別学習パッケージ<表2> A〜H型のうちA型のみを示す。
(8)形成的チェック栗(略)
(9)自己評価票(5〜1の評定尺度,略)