福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -002/038page

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教 員 研 修 改 善 の 方 向

国立教育研究所企画室長 牧 昌 見

1.「教養審」の提言

 臨時教育審議会(「臨教審」)の提言を受けて,その具体化を進めた教育職員養成審議会(「教養審」)は,昭和62年12月に「教員の資質能力の向上方策等について」文相に答申を出した。政府・文部省ではこの教養審の答申に基づき,各種の行政施策の立案・実施に取り組んでいるところである。これら一連の改善施策については,筆者もそのひとりとして関係しているところである。

 教養審の答申によると,現職研修の改善について,その観点として次の3点をあげていることにまずもって注目したい。

 1 各教員が教職の全期間を通じて必要な研修に参加できる機会を確保すること。

 2 国・都道府・市町村等の各段階における研修が相互に関連をもって行われるようにすること。

 3 その際,社会の進展に対応して,研修内容を絶えず見直し整備すること。また,社会の構成員としての視野を広げるという観点から,学校以外の施設等における体験を積極的に取り入れること。

 上記1は,教員個人がライフ・ステージに応じて研修に参加できる途を開くべきことを,また2は1の機会を確保するためのサポート・ストラクチャー間の連携・協力を,そして3は研修プログラム編成上の留意点を,それぞれ示している。いずれもポイントをおさえたもので,教員研修改善の観点を適切に述べているとみてよい。

 そこで基本となるライフ・ステージをどうおさえ,各ステージどとにどんな研修プログラムを用意すべきかが課題となる。この点について教養審は,任命権者が初任者研修に引き続き,すべての教員を対象に行うべき研修の時期と内容を例示している。この点は従来の答申になかったもので,教員研修の改善に期待するところがいかに大きいかがわかる。

 ただこれはあくまで例示であって,任命権者の裁量でもって具体的には決められることになるが,次に示すように三つのライフ・ステージがあげられている。

 <教職経験5年程度の時期>

 学習指導,生徒指導,学級経営等 教職一般についてひととおりの職務遂行能力が身につく時期である。この時期には,さらに学級担任,教科担任としての力量の向上が望まれる。

 <教職経験10年程度の時期>

 学級担任,教科担任としては相当の経験を積んだ時期であるが,この時期には,とくに学級・学年経営,教科指導,生徒指導等のあり方に関して広い視野に立った力量の向上が望まれる。

 <教職経験20年程度の時期>

 教員として求められる多様な経験を十分に積んだ時期にあたるが,この時期は,さらに校内におけるリーダー的な役割を果たす教員として全校的視野に立った指導力の深化が望まれる。

 なお,教職経験をふまえ,新たな職能に応じた研修として,主任研修,教頭研修,校長研修が必要であるとし,活力ある学校の形成という観点から,研修内容の充実を図ることを提言しているが,これらの研修については例示はなされていない。

 課題  今日および今後の教員研修をめぐる課題としては,初任者研修は別として,およそ次の5点をあげることができる。

 1 初任者研修後のライフ・ステージをどうおさえるか,つまり節目をどう設けるか。

 2 その節目ごとにどんなねらいで,どんな研修内容を用意すべきか。


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