福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -003/038page
3 個性・特性を異にする教員は当然多様な職能成長を遂げるから,標準的・平均的な対応のしかたでは不十分である。この点への配慮をどう加えたらいいか。
4 マネジメント・マインドが要求されるが,学校経営等,経営的側面の研修を充実するにはどうしたらいいか。
5、“ひしめく50代”の11引退”後に向けての管理職研修は,どうしたらいいか。
以上のうちでも,中堅教員と管理職の研修については,初任者研修と同等以上に重要である。中堅教員は教師として一定の職能成長を遂げ,その資質能力に異るべきものがあると考えられるが,学校教育の効果的展開に必要とされる経営的識見をみがき,後進の指導にあたるという新たな能力の開発が要求される。また管理職研修の重要性については多言を要しない。
しかし今日もっとも大切なことは,研修活動が日常の教育活動に結びつくことの重要性に着目し,校内研修の充実にいっそうの努力を傾注すること,同時に研修指導者の養成・確保に努力することである。
2.校内研修の改善
そこで教養審の答申が校内研修をどう位置づけているかをみると,「第2 教員の現職研修の改善」の冒頭部分で,次のように述べている。
「教員の職責にふさわしい資質能力は,教員養成のみならず教職生活を通じて次第に形成されていくものである。
この場合,教員自身が修練を積み重ねることによってその資質能力を高めていくことが基本となることはもとよりである。そのためにも,教員全員が参加する校内研修の充実を図ることが肝要である。」
一口に校内研修といっても,その概念は必ずしも定着しているわけではない。理論的には校内で教員が行う研究と修養の活動であって,その態様は個人的と共同的との2側面がある。しかし実践的には主として後者の側面を意味していると解される。
共同的な研修といっても,グループと全員参加など多様である。また全員参加といっても,学年や教科などを単位にグループを編成することが少なくない。このあたりは研修の目的に照らして考えればいいのであって,形にとらわれることは実効を伴わないから,弾力的に考えるのがよい。教養審の答申は,「全員参加の校内研修の充実を図ること」を強調しているわけである。
答申はさらに次のように述べている。
「校内研修の実施に当たっては,各学校の教育目標を十分踏まえ,かつ,地域や幼児・児童・生徒の実態等を考慮しつつ,組織的に計画,実施し,十分な評価を行うことが重要であり,その成果は,幼児・児童・生徒の教育に適切に反映される必要がある。」と。
ここの部分には重要なポイントが含まれている。それは学校教育目標をふまえることと,計画〜実施〜評価,つまりPDSのサイクルをおさえるべきことの2点である。
答申はさらに「校長をはじめとする教員は,校内研修が校内の課題の解決と教員個人の教育力を高める上で基盤となるものであることに留意し,その活性化のため一層の努力をする必要がある。このような校内における研修指導体制を整備するためにも,主として指導分野を担当する教頭を新たに配置することについて検討する必要がある。」と。
ここでは校内研修の役割・機能が述べてある。つまり校内研修は校内の課題の解決に役立つとともに,教員ひとりひとりの指導力を高める上で基盤となるというのである。もうひとつ重要な指摘は,「主として指導分野を担当する教頭を新たに配置する」との提言である。
校内研修が全校的規模で行われるという場合,特に初任者研修を視野に入れるとき,校内の指導体制・協働体制の確立が課題となる。いずれにしても今日求められる学校の活性化にとって校内研修の果たす役割が大きいわけである。各学校の主体的な改善努力とともに,それを可能にする教育センターの研究機能の充実を期待したい。