福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -005/038page

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所員個人研究  −小図画工作・中・校美術−

色彩指導と色覚異常

学習指導部 田 中 四 郎

1.はじめに

 色彩は,生活全般に深くかかわり,生活の向上に寄与するものとして重要である。それだけに,色驚異常者が色彩に抵抗感を持って生活するようなことなく,積極的に色に親しませ,色の扱いに自信を持たせるようにしたいものである。

 そのために,色覚異常について理解を深め,色覚異常者への対応について考えようとするものである。

2.色覚異常についての理解

 色覚異常者が,どのようなときに色を誤認し,そのことがどのようなことで問題になるのかを探るとともに,色覚異常についてできる限り正確な知識を持つことが重要であると考えられる。

(1) 色覚異常とその対応

 色覚自体は変化することはないが,色を識別する能力や色名との対応は年齢と共に向上すると考えられる。つまり,色覚異常者は,色相を区別する能力が劣るのであって,明度・彩度の識別能力が悪いのではない。色の識別はこれらのすべての能力に経験を加味しておこなわれるものであるから,年齢と共にしだいに色の誤認は少なくなると考えられる。事実,小学校高学年ではほぼ木の幹と葉の色は区別して描けるものと考えられている。したがって,色覚異常が最も問題になるのは,生活経験の浅い幼稚園から小学校の中学年までであり,この時期での配慮が最も大切になってくると考えられる。

 そしてまた,高等学校で美術の授業を担当している際に,毎年,色覚異常者の有無について調査した結果,色覚異常者が存在するにもかかわらず美術を選択していることはなかったのである。このことは,色覚異常であることが,それだけ生徒個人の精神的な負担になっていることの表れであるとも考えられる。また,美術が必修である中学校の段階でも,色覚異常はほとんど問題とはなっていないように思われるが,表面にでないところで精神的な負担は大きいのではないかと思われる。

 このようなことから,色覚異常者への対応としては,子どもが色を誤認し傷つくかもしれないということと,色覚異常であることによって,精神的な負担を抱いているであろうことを合わせ考えていかねばならないものと思われるのである。

(2)色誤認と問題の起因

 ある大学における岡島氏の調査結果によると,学校生活における色誤認の具体例として,次のようなことが判明している。

 ・うす暗い所で,ボールペンの赤と黒,カレンダーの祝日と平日が見分け難い。

 ・黒坂の赤チョークが読めない。(第一異常者)

 ・地図に使われている赤と緑,育と紫がひと目で区別できない。

 ・緑の葉の中にチラホラ見られる赤い花や紅葉を確認できなかった。

 ・図工の時間に,赤と茶を使い間違えたことがある。

 ・木の幹と葉を区別して描けなかった。

 ・科学実験の中和滴定などの際,正しいかどうか自信がもてなかった。

 このような中で,図画の時間の色誤認は,幼稚園から小学校低学年に集中しており,そのときの教師の対応によってはいかに児童が傷ついたか,調査によせられた多くの経験談から,ずいぶん前のできどとにもかかわらず,その口調の激しさから驚くばかりであると報告されている。


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