福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -006/038page
この調査からわかるように色覚異常が問題になるのは,絵の製作など実際に色を使用する際に,他人に色誤認をしたことがはっきりわかるときである。そのとき,教師にその子どもが,色覚異常者であることの認識がなく,みんなの前で注意をしたり,また,他の子どもがそのことを面白がったりすることで,色覚異常の子どもが傷つくことが考えられる。このような周りの配慮のなさが,その子ども自身が異常であることを自覚している,自覚していないにかかわらず色覚異常が原因して問題を引き起こすことになるであろうと考えられる。
(3)異常とはどのようなことか
色覚異常には,赤緑異常と数十万人に1人と極めて頻度の少ない,しかも視力が0.1前後の全色盲がある。したがって,一般に色覚異常の対象は赤緑異常のことである。赤緑異常は次の二つに分けられる。
・ 第一異常(緑の−部の彩かさが感じられない。赤が暗く見える。)
・ 第二異常(緑の一部の彩かさが感じられない。
そして,その各々に異常に見える程度の強い色盲と,程度の軽い色弱とがある。色弱はさらに強度,中等度,軽度の三つに分類される。一般的には,中等度以下の色弱ははとんど異常を自覚することなく生活できると考えられている。これに対して,強度色弱と色盲はしばしば誤った色覚体験をする。
(4)異常者の頻度と遺伝
わが国では男性の約5%,女性の約0.2%が色覚異常である。したがって,全国の児童生徒の中に45万人の異常者がいると推定できる。ここでいう色覚異常とは赤緑異常のことであって,赤緑異常は伴性劣性遺伝をする。異常のある父から,見かけ上は正常な娘を通して,男の孫に遺伝する。父親の色覚異常は息子には伝わらない。母親の色驚異常が息子に伝わることになる。
(5)異常者の色の見え方
色覚異常者は,どのように色が見えているのかなど,混同しやすい色の理解が指導者には必要でぁる。*長沢氏の説によると,下図のAに位置する色(例えば,山吹色)とBに位置する色(例えば,黄緑),あるいはCに位置する色(紫)とDに位置する色(緑がかった青)とが最も混同しやすい。
また,正常者にとっての色相環と色覚異常者(強度)にとっての色相環には,下図のような違いがあると考えられる。
(6)異常の傾向
異常の傾向にはあるパターンがあり,その傾向は有限であると考えられている。その傾向として,長沢氏の説によると,下記のようなことが誉げられている。