福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -007/038page
3.色覚異常者への対応の基本姿勢
子どもの色覚異常がわかったとき,「これは大変だ」と思うことが問題なのである。異常者は,色の識別能力の発達だけが遅れている者として対処すべきで,色覚異常自体は,それほど重大な問題ではないとする意識を基本姿勢として持てることが大切であると考えられる。
更に,この基本姿勢を貫くため,色覚異常についてできる限り正確な知識をもつことが大切である。
4.指導上の配慮事項
色彩体験をさせる上で何よりも大切なことは,不用意な言葉で異常者を傷つけないことであるが,配慮事項としては,下記のようなことが考えられる。
(1) 色覚異常者の有無を事前に調査しておくことが大切だが,調査資料のない場合でも,指導する子どもの中に色覚異常者が存在している可能性があることを意識していることが必要である。
(2) 指導者には,色驚異常者が混同しやすい色についての理解が必要である。
(3) 何故こんな色を使うのだろう,どうしてこんな色を間違うのか,というような思いを表情に出すことのないようにする。
(4) 色誤認をした場合に決して,たしなめることをしてはいけない。子どもの奇妙な配色を見つけたら,色覚異常の有無を調べることである。
(5) 小学校低学年の強度異常者に対する配慮は,色の使い方を熱心に教えることでほない。色の識別能力や色名との対応は年齢と共に向上すると考えられるから,それに手をかす程度のさりげないアドバイスが必要であり,いわゆる「正解」のおしつけをしないことが大切である。
(6) 異常者は正確な色の伝達が困難になることを,教師は心しておく必要がある。
(7) 赤が暗く見えて黒と間違うのは第一異常者の特徴であるから,赤のチョークを使用しないようにする。
(8) 特に小学校低・中学年の題材の取り上げ方に留意する。
5.おわりに
色覚異常が,学校生活の中で大きな問題になってはいないように思われるが,異常者には,正常者の目に見えないところで負担があり,また傷つくことも多くあるのではないだろうか。先に述べた大学の調査結果は,明らかにその事実を語っている。極めて少人数であっても,その対応を真剣に考えなければならない。
美術と色は切り離せないが,それだからといって色誤認を問題にするのは美術教育だけであってはならない。全教師が,色覚異常者に対して単なる同情でなく,あたたかい心づかいと確かな理解をもって対応することが大切である。多くの色に囲まれて生活する時代でありながら,色で苦しむ子どもがいるとすれば,その子どもの気持ちになって考えたいものである。
≪参考文献≫
・色彩の力(色の深層心理と応用)デボラ・T・シャープ著:福村出版
・色その科学と文化:江森康文・他編 朝倉書店
・教師のための健康教室(色覚異常について)
* 岡島 修:愁1986 ・ 5〜6:ぎょうせい
・色覚異常児童・生徒への対応と指導の指針
(先天性色覚異常者によるカラーネーミング)
* 長沢和弘:(講演資料)