福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -008/038page

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所員個人研究 −小・中・高学級経営−

学級経営に生かすソシオメトリー

学校経営部 吉 田 正 夫

0.はじめに

 学校におけるコンピュータの利用に関する内容は教育関係の雑誌や新聞に掲載され,多くの実践例が報告されている。本教育センターの各講座でもコンピュータ利用を図るべく講義演習が計画され県下の先生方への普及に努めている。例えば,S−P表作成による学習評価やソシオメトリーのプログラム化による児童・生徒の人間関係の理解である。ソシオメトリーのプログラム化はコンピュータの多様な処理機能を生かし,コンピュータの有用性を発揮する“道具”としての偉力を示してくれる。それは,1 これまでのソシオメトリーの実用の範囲は「原子図」「マトリックス」を手書で処理する程度であった。2 コンピュータ処理によればその計算処理機能と敏速性を生かし図2,図4の処理やグラフィックス機能を用いて図3,図5,図6の処理等ができる。3 今後,ますます複雑化する学級内の人間関係を理解し学級経営を行うのに有効な手法である等が挙げられる。そこで,コンピュータ処理によるソシオメトリーの活用法について述べてみたい。

1.学級経営情報としてのソシオメトリーの必要性

 人間性豊かな教育は学級経営の中にこそ実現されなければならない。学級は現在の学校教育の単位組織であり,児童・生徒の学校生活の基盤である。この意味からも学校の創意を生かした経営の哲学とそれに基づく計画が必然的に要請される。一方,子ども遠から見れば単位組織の構成員として,同輩集団の子ども達相互に対等な者としての人間関係が存在しなければならない。子ども達が自主的に集団のルールをつくったり,行動の自由な選択ができるものでなければならない。学級集団を組織化するということは子どもを取り巻く人間関係を調節して学級という意識を高め一人一人の人格や人間性を高度に高めていく指導の方法を打ち立てていくことにある。組織化される子ども達は一般に無作為に選択されその構成員となる。従って,子ども達相互に学級集成の秩序が安定するまでには葛藤が生じたり,反目の現象が現われたりする。この安定に至る過程において教師の適切かつ正確な援助指導がなされる必要があろう。

 適切な援助指導が大切である。この指導に科学的に実態を把握し客観的な資料を提供してくれるソシオメトリーの理論が生きるのである。そして指導過程の変容を敏速かつ多量に処理し,加工情報を与えるコンピュータが生きるのである。ややもすると経験的実践論は展開されても,一般化された理論構成までは手が届きかねている。いわゆる経験的な操作論で片づけられている。科学的なデータに基づいた子ども達への対応が今日の学級経営上必要不可欠なものとなろう。科学的データを得るためにコンピュータの利用は増々日常的なものとなる。ソシオメトリーのような理論や学習内容に依存しないコンテントフリーソフトを“一道具”として用いるためにもコンピュータの利用は欠かせないであろう。

2.ツール(道具)としてのソシオメトリー

 (i) ソシオメトリーのデータ

 コンピュータである処理をする場合・その基になるデータ(情報)が必要である。ソシオメトリーの素材になるデータは各々の子どもが「誰を何番目で選択・排斥しているか」である。このデータを加工し,2次情報を得ることによって各々の子どもの人間関係やその集団での立場など適切に解釈する手助けを与える。


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