福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -010/038page
出されたなら日常の教育指導の中で改善に努める。
図2のB5(BはBoy−男子)のようにRDの数6と高い。このような場合この子どもに対する選択排斥の理由を吟味する必要がある。ここでは「直ぐ文句をいう」「いじめる」などを挙げている。このような理由のとき,この子どもは善し悪しほ別としてリーグ(ボス的な)となり得る者である。このことは同欄の「ア」「キ」の矛盾した結果からも判断できる。
(ii) 席替えに利用
席替えの目的は学級の子ども達の学習を促進し学級を活力あるものにすることである。一般に席替えの条件としては身体的な点を考慮する程度であろう。そこで,児童・生徒の役割によるパーソナリティの変容と情緒の安定をねらい調査を実施する。そして,図5のように児童・生徒の座席配置を空間的に捉える。この図では児童番号9,710,6,4,11,17,19の空間を分析すると,あまりに排斥関係が高く情緒的安定に欠く配置と思われる。調査した内容を吟味しながらモデル的に座席配置を考え,コンピュータ処理を繰り返して,最適な配置を作り出すことができる。このような点にもコンピュータ利用の意義がある。
図5 座席八方情報
(iii) 問題児・不適応児などの指導に利用
学級には指導上,特に配慮を必要とする子どもがいる。これらの子どもへの対応は問題の実態に即し多面的で柔軟でなければならない。問題の解決や改善には教師の働きかけに負うところが大きいと同時に,学級の子ども達相互の影響もそれ以上に大きいことも知られている。例えば図2でG7(女子)は「シキ」の表示がある。これはデータ上「周辺児」「嫌われっ子」を表す。この場合,被排斥数4の理由を吟味し担任として有効な手立てを講じることがこの子を生かすことになろう。そして,被選択者G13,G12をどう関わらせるかである。G13,G12を仲立ちとして集団への適応を図るよう援助してやることが担任としてG7の子どもへの配慮の一つであろう。 そして,図6のような表示を併用すればコンピュータ処理による意義が深まり,指導の“道具”としてのソシオメトリーの理論が評価されることになろう。
図6 座席と子供の排斥関係
4.おわりに
人間性を求める学級経営に非人間的であると思われるコンピュータというマシンを用い,学級集団の成員である子ども達の指導の手がかりを得ようとすることは矛盾に満ち,冷たい作業の感があるが,一つの理論をプログラム化し敏速かつ多量な情報を得る目的でコンピュータを用いたのである。これは教師の経験的なものを大切にしながら科学性を強調しようとしたのである。しかし,一つの理論が万能でないことは周知のことである。一つの理論の欠点を補うために他の科学的データと総合して判断する必要がある。知能検査,学力検査,性格検査,親子関係診断検査等を実施してこれらの検査をバッテリー情報として子どもに対応することが望ましい。ソシオメトリーは有効不可欠な学級経営上の一理論である。