福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -011/038page
所員個人研究 −小学校学習指導・算数科−
基礎的・基本的な内容の定着を図り,個性を生かす指導
学習指導部 村 上 幸 男
はじめに
小学校2年の水のかさの授業で,牛乳びんとジュースびんを提示し
「どちらに水が多く入りますか」
と発問した。
牛乳びんの方が太いから多く入る。ジュースびんの方が高いから多く入る。同じだと思う。などいろいろな考えが出された。
すると,両方のびんを四方からじっと見ていたA子が
「ジュースびんは340だから多く入る」
とつぶやいた。
日常の生活経験からくる発想の豊かさとでもいうべきものであろうか,340mlの数値に目を向けていたのである。
授業を行っていると,教師の肝を抜くような考えが出され,それに戸惑いを感じ,その考うを生かしきれないで授業を終わり,後で反省させられることがある。
子供を取りまく社会的構造の変化に伴い,「学び」のメタ認知的知識が変わりつつあると言われている。そこで,一人一人の認知過程や考え方の違いなどを生かし,意欲を持たせて学習を展開し基礎的・基本的な内容を確実に身につけさせる指導がいっそう大切になってくる。
昨年12月に答申された教育課程審議会でも基礎・基本の徹底や個性を生かす教育を図ることが特に重要であると提言している。基礎的・基本的な内容を定着させ,個性を生かしていく授業を創造することが学校教育の重要かつ緊急な今日的課題で,特に,算数では問題解決の過程で一人一人の考えを生かし数理的な考察処理の「よさ」を分かるようにすることが大切であると考える。そこで,一人一人の考えを生かし,基礎的・基本的な内容の定着を図る授業のあり方を,単元全体を見通した指導計画の作成,学習形態と課題追究のさせ方の工夫,年間を見通した評価の工夫等から考えたい。
1.単元全体を見通した指導計画の作成
子供の学習意欲や思考過程を大切にするためには,子供がゆとりをもって活動できるようにすることが必要である。そのためには,児童の実態や指導内容等から特に重要と考えられる内容について,単元全体を見通して取り扱いを吟味し軽重をつけることが大切である。単元を1つのまとまりとして考え,毎時間の関連を明確にしておくとともに指導過程の「どこで」「どのように」考えさせるのかを明確にしておくようにする。次の指導計画例は,単位時間ごとに学習意欲と思考過程の面を考え,単元を見通して作成したものである。
・ 学年 第2学年
・ 単元名 せいりのしかた(算数)
・ 指導計画
時 児童の主な活動 ◊意欲づけ・思考を生かす面での工夫 一時 * ポウリング遊びを通して資料作りをする。
・6粧に分かれてボーリング 遊び
・班長が結果を記録表に記入
* 記録義よりだれが多く当たったか見やすいように書きなおす。
・Οだけの記録表
・×だけの記録表* 資料作りとしてのゲーム化を図り活動を多く取り入れる。
◊ ポウリング遊びの結果から得られたΟや×にも意味があり,これらをもとにして学習が展開できるように資料作りをする。二時 * 各班の書き直した前時の記録表を見て,どの班のが見やすいかを話し合う。
* Οだけの表にする。
・グラフ化
* 自分達の班の当たった数を数字で表す。
・表化* 提示された資料を見比べることにより興味を持たせて考えさせ,より見やすいものに整理していくようにする。
◊ 1時で結果として得られた資料をもとに考えさせると同時に.子供のつぶやきや考えたことをノートに記録させ発表させる。三時 * 記録表とグラフ,グラフと表を比べて話し合う。
・何回日に当たったかが分かるのは。
・多く当てた人がだれか見やすいのは。
・当たった数が分かりやすいのは。
* 教科書の資料をもとに,表やグラフに書き表す。* 課題を把握させるための資料を子供が考えやすいように既習した順序にしたがって提示する。
◊ 既習事項をもとに新たな資料について表やグラフに表し,新たな資料の活用化を図る。