福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -014/038page

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所員個人研究 −中学校学習指導・理科−

自然現象を視覚的にとらえるための教材開発

−図や写真を立体的に見させる工夫−

科学技術教育部 湯 田 健 −

1.はじめに

 理科学習の地学分野では,時間的概念とともに空間的概念の見方・考え方が特に重要な位置を占めている。その中で立体視の教材は,空間的概念を育成するのに効果的であることから,近年,教科書などで立体視のための図や写真が多く用いられてきている。

 これらの図や写真を立体視できる生徒はいろいろな立体写真を見て楽しむことができ,興味や関心も高まり意欲的に授業に取り組み,必然的に学習活動も活発になる。

 しかし,実際の授業で生徒達に簡易実体鏡などを使って,教科書にのっている立体写真をのぞかせてみると,これを立体視のできない者がクラスの中にかなりいる。

 それで,これらの原因を探り,授業の中で全員が容易に立体視の出来る指導方法はないかと考えていた。

2.研究のねらい

 先に述べた通り,立体視を経験した生徒は学習への取り組みが意欲的になり,思考も発展的で授業内容も深まっている。こうしたことから,立体写真の立体視を一人でも多くの生徒に経験させ,立体写真のおもしろさや楽しさを味わわせるべく研究課題は次の2点にした。今回の発表内容は(2)を対象としている。

(1)立体写真を立体視させるための効果的な指導法の工夫をする。

(2)

学習への意欲づけと理解の深まりを助けるために,図や写真が3次元的に見えるような方法を工夫する

3.立体視について

挿絵1

 立体視とは物体の形,位置,距離などを3次元的に認知する視覚能力である。立体的なものを両視眼で見る場合,右眼の網膜像と左眼の網膜像は異なる。ヒトの感覚としてはその違いが立体感を生む。即ち少し違った網膜像をひとつのものに融合して感ずるときに立体視が生まれる。


4.平面が立体的に見えるわけ

挿絵2

(1) 立体写真の場合

 図のように.上から直方体を写したとする。左と右の写真では直方体の写されている位置が異なることになる。レンズに近いものほど位置のずれが大きい。物体から2つのレンズに向かう2本の光線のつくる角度もレンズに近いほど大きくなる。


挿絵3

 立体写真を撮影されたときと同じ状態でながめてみると,左と右の写真に写されている同じ対象物の対応する光線は互いに交わりそこに像ができる。人間の眼では左の写真は左眼で,右の写真は右眼で同時に見れば立体的に見えることになる。



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