福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -015/038page
(2)補色利用の場合
紙に赤い色鉛筆で描いたものに赤色セロハン紙を重ねると描いたものがセロハン紙に吸収され見えなくなってしまう。赤以外の色鉛筆の場合はセロハン紙の上から見ることができる。青い色鉛筆で描いたものは青セロハン紙で同じように見えなくなってしまうし,また青以外の他の色は見ることができる。一般的には赤と青を使って,このことを実施しているが他の色でも全く同様である。このことを利用すると(1)の場合のように視差を生じさせることができる。図のように左図を青で,右図を赤でわずかにずらして描き,これを左眼には青色,右眼には赤色のフィルターのをかけて見ると左の眼は右の図だけ右の眼は左の図だけを見ていることになるので,視差が生じ,図を立体的な像(3次元的な図)としてとらえることがでいる。
5.研究内容
私はこの補色利用の方法で図を立体的に表そうと試みた。この方法を選んだ理由は,青赤のフィルターも容易に手に入り,青赤のTP用ペンで図を描き,それをOHPスクリーンに映しだせばクラスの全員が見ることができ,また,コツさえつかめばこの方法は,一般的なTPつくりと同じように簡単にでき,指導の効果も上げることができるからである。
(1) 補色利用の立体表現
1 青赤のフィルターと描くものについて
フィルターの材料〜アクリル板,セロハン,TP用カラーボード等
描くためのもの 〜色鉛筆,クレヨン,絵の具,ポスターカラー,マジック,TP用ペン等
フィルターの条件として,まず描いたものがフィルターをかけると消えるということである。
この条件のもとに手に入り易い材料,「授業で多くの生徒が見ることができる立体視」ということを考え,私はフィルター用にはセロハン,描くものとしてはTPパンを利用した。
ただ,フィルター用のセロハンとTP用ペンもメーカーによってかなり異なり同じ青,赤といっても種類は多い。はじめにしっかりしたものを選ぶことが必要である。セロハンの青赤は濃いものがよく,描くペンの青赤は比較的明るく薄い感じのものがよい。
2 描き方と見え方
・ フィルター
フィルターは図のようなめがねをつくって,それを通して見る。右眼を赤,左眼を青にして,図を描く。
また,図はそのままで右眼を青,左眼を赤のフィルターにすれば遠近感は逆になる。
・ 描き方と見え方
[近くに見える]
青赤のずれが大きい
線は太い
形は大きい
[遠くに見える]
青赤のずれが小さい
線は細い
形は小さい
(2)補色利用の実例
<1> TP作成について
1.青を基調にしてひとつの図を作図する。
2.TPをもう一枚重ねて,今までの手法を用いて赤でなぞる。2枚使用することにより,描いた青の線に赤の線が混じらない。
3.文字や記号を書き加えるときは,書く位置等に注意する必要がある。
4.図のまわりはおおった方がより立体的になる
5.なるべく室内は暗い方がよい。