福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -016/038page
<2> TPに立体写真をコピーした例
1.立体写真をTPに写す。
2.OHPは2台準備する
3.左のOHPに赤,右に青のフィルターをかける。
4.作成したTPを同時にスクリーンに映し,調節する。やや慣れないと困難さが伴うが,立対的に見える所で印をつけておく。
(3)補色利用の利点
-1- 指導の面
教材をスクリーンに映し出すことにより,多人数が同時に同一の対象物を見ることができる。このため指導の効果が上がる。立体鏡の場合,一人一人が下を向いたまま観察するため,ポイントをおさえた指導に難しい面がある。
-2- 作り方の面
フィルターの材料は安価で,手に入りやすく準備・製作等(めがね)が容易である。また,スクリーンに写すためのTPも,今までのTP作成の方法と同じである。
(4)立体視の効果
立体写真を見てできた立体視の像は,その実物の凹凸と変わらずに見えるということである。そのため地形や地層などもそのままの状態で再現できるので,その場所に行って観察したのと殆ど同じ効果が期待できる。
何よりも平面(2次元)が立体的(3次元)に見えるということは,非常に新鮮な感動を呼び,ー度この立体視を経験した者は,立体図や立体写真があればのぞきこみたいという強い衝動にかられるものである。これは生徒達にとっては強い学習意欲の引きがねにもなるであろう。
6.反省と問題点
立体視の研究と指導を通して,いろいろな疑問点が出てきた。以下そのことについて述べてみる。
(1)補色利用の場合
青赤のフィルターと青赤のペンを利用し,立体的な像ということを考え,描いた像はそれなりの立体的(3次元)なものに見える。これは一応の成果と思う。
しかし,正確でより臨場感のあふれる立体的な像をと考えれば,写真になる。この写真をスクリーンに映した場合はまだ未熟な段階でとどまっている。
(2) 立体視を困難にする他の要因
練習次第で立体視ができるかというとそうともいえない。
身体的なことになるが,極端に両眼の視力に違いがあれば,立体視はやはり困難さを伴う。「見えない」と言う生徒には,視力や色覚も調べる必要があるように思う。
精神的な面も重要な要因である。これは平面が立体的になど見えるはずがないと強く思いこんでいる生徒の場合も見えないでしまう。見えるという暗示的な面も必要である。
7.おわりに
今回は立体写真の肉眼視に触れませんでしたが機会があれば立体視の指導法にも論じたいと思います。この立体視の研究はまだまだ工夫改善していかねばなみません。いろいろな観点からご批評いただければ幸いです。
参考文献 地学ステレオ図集 (実数出版株式会社)
立体写真のみかた他 (日本写真測量学会)
大日本百科事典ジャポニカ (小学館)