福島県教育センター所報ふくしま No.88(S63/1988.10) -027/038page
研修者研究報告(学校経営B講座)
教育活動全体を通して,他人に信頼される資質を養うための指導
耶麻郡山都町立山都中学校教諭 和 田 敬 三
1.研究の趣旨
学校教育における今日的課題として,臨教審の答申でも言うように学校教育の負の副作用としての画一性,硬直性,閉鎖性,非国際性等があげられる。これらの問題に関して本校の生徒の場合,解決をせまられる課題として,<1> 豊かな心をもち自分を大切にすると共に他人をも大切にする心の育成。<2> 集団活動を通して,自主性,自発性,積極性を高めること。<3> 苦しさに耐えながら最後までやり通す力を育てること。等があげられるが,これらには上記の国際性にからむ問題が非常に多くふくまれていることに気づくのである。本校では昨年度,進路指導の研究を通して,これらの課題の解決をはかってきたが,今年度は文部省より教育課程一般「学校の教育活動全体を通じて,国際社会の中で信頼と尊敬を得る日本人として必要な資質を養う工夫」の研究指定を受けたのを機会に昨年度の研究の継続をふくめてこの研究に取り組むことにした。そこで,国際社会の中で信頼を得る人間を育成するためには,職員の協働意識をもとに,まず校内において他人に信穎される人間を育成することが先決であると考えた。そして,それらの資質を学校の諸活動の計画−実施−評価に生徒を主体的に参加させることを通して養おうと考え,本主題を設定した。
2.研究の見通し
学校行事や奉仕活動などの計画−実施−評価に生徒を主体的に参加させ,他人とのぞましいかかわりを実現できる場面を計画的・意図的に設定し実践すれば生徒の自主性が高まり,他人に信頼されるための資質が養われるであろう。
3.研究の方法と対象
(1) 研究の方法
<1> 全体検討会で主題と研究内容の検討。
<2> 教育活動の全体計画の検討。
<3> 実態調査の分析,問題点の把握
<4> 参考資料の収集及び文献研究。
<5> 実践事項の細実検討及び作成。
<6> 研究実践。
<7> 研究実践のまとめと実態調査。
<8> 実践結果のまとめ。
(2) 研究の対象
本校教師15名,生徒184名
4.研究の内容と推進計画
(1) 研究構想の策定―6月
(2)文献研究及び参考資料の収集―6月
(3) 実態調査,問題点の分析・考察―6月
(4) 具体策の立案・検討・実践―7月
(5)実態調査の実施,分析,考察―11月
(6)研究のまとめ―12月
4.研究の概要と考察
(1)研究の概要
他人に信頼されるための資質を養い高めるための要素として,自主・自律,奉仕,協同,勤労の精神などがあげられる。
-1- 道徳検査の分析から。
本校生181名を対象に新道徳性検査を実施したところ,次の様な実態がわかった。個人としての道徳は,全国平均にあるが,社会構成としての道徳はのきなみ低く,特に全学年を通して劣っている項目は次の様になる。
<個人道徳に関する項目>勤労観,自主自律。
<社会道徳に関する項目>社会連帯の意識,友人間の敬愛,秩序と規律。
そこで,本校の教育目標と関連づけて.本校生に不足している資質を次のように考えた。
-2- 信頼されるための資質の中で不足してい
行事名 勤労生産活動 <目標> 生産の喜びを体験し,教育目標である(1)思いやる心を持つ生徒(2)考えぬく力をもつ生徒(3)鍛えぬく力をもつ生徒を具現化するために栽培活動を重視する。
この実験を通して,協力し合うこと,働くことの尊さ,働く人々を尊敬する態度を培い作り育てる活動の楽しさと成就感を体得させ,正しい勤労観をもった心身ともにたくましい人間性を育てたい。
また地域社会の自然の中で力いっぱい身体を動かし,大地に働きかけ,自分たちの力で生産する事を通して,勤労の必要性,勤労に対する心構えを自覚させたい。