福島県教育センター所報ふくしま No.89(S63/1988.12) -008/038page
所員個人研究−小・中・高教育相談
教育相談における交流分析の活用
教育相談部 荒 敏 久
1.はじめに
昭和62年4月から昭和63年2月まで当教育センターに不登校を主訴として来所した件数は183件(55.6%),延べでは1,032人にのぼる。
不登校を主訴として来所した親との相談で親やその他の家族が子供に一生懸命にかかわっている状況がわかる。しかし,その一方で,子供が不登校になっている。
そこで,今までの養育態度について再検討をしてみると,その養育態度が子供の性格形成に影響を及ばし,子供が問題行動にいたっているのではないかと考えられる。また,親自身の性格特性が養育態度とも関連があるのではないかとも考えられる。
以上の事から,本研究では,交流分析(TransactionalAnalysis;TA)の考え方によるエゴグラムを使い-1-不登校の生徒の性格特性,-2-不登校生徒の親の性格特性と養育態度について明らかにし,その結果をもとにして,-3-問題解決のための適切な指導援助の方法を探っていきたい。
2.交流分析とエゴグラムについて
交流分析は米国の精神科医エリック・バーンが創始した心理療法の一つである。そのねらいは,
・自己への気づきを深めること
・自律的な生き方をすること
・よりよい人間関係を作ること
である。
その内容の一つは次の通りである。
個人のパーソナリティーの分析で自我状態(親の自我状態P,大人の自我状態A,子供の自我状態C)の分析である。
エゴグラムはそれぞれの自我状態における心的エネルギーの量を客観的にとらえてグラフ化したものである。
3.不登校の生徒の性格特性
(1) 集計方法
昭和56年度から昭和62年度までに当教育センターに不登校を主訴として来所した事例の中からエゴグラム(九大式,8点法)を実施した高校生の41事例を抽出し各自我状態の平均得点を出した。
また,不登校の高校生と健常と思われる高校生(以下健常と表現)113人の各自我状態の平均得点との比較を試みた。
(2) 集計結果
結果は表1,図1の通りである。
表1 不登校の生徒と健常の生徒のエゴグラムの各自我状態の平均得点
図1 不登校の生徒,健常の生徒のエゴグラムのプロフィール