福島県教育センター所報ふくしま No.89(S63/1988.12) -010/038page
3 エゴグラムと養育態度との関係
結果は表4の通りである。
表4 不登校の子供の父母のエゴグラムの自我状態の各尺度と親子関係診斬検査(田研式)の各型の相関で特に相関のみられたもの
( )内は相関係数
父親 CP―厳格型(0.441)期待型(0.309) AC―消極的拒否型(0.364)干渉型(0.356)
積極的拒否型(0.417)矛盾型(0.450)
期待型(0.231)不安型(0.220)
母親 AC―積極的拒否型(0.202) 消極的拒否型(0.180)
(3) 結果の分析と考察
1 父親
エゴグラムではAの自我状態が高く,CPが低い。また,NPが比較的高い。
養育態度では消極的拒否,矛盾,不一致が特徴的といえる。
このことから,積極的な親子関係ではないと考えられる。また,CPが低いことから子供にとっては優しく,規範性のモデルになり得てないと思われる。
2 母親
エゴグラムではNP,FCが高く,CPが低い。養育態度では,積極的拒否,消極的拒否,矛盾,不一致である。
このことから,情緒的に混乱し,やさしい,一方,感情的な母親の姿が浮かび上がってくる。しかし,実際の親子関係では積極的なかかわりがみられていない。
さら 親,母親ともにACが比較的高く,他を気にする傾向があるように思える。このことが子供のACの高さに影響を及ぼしているのではないかと考えられる。
5.不登校に対する交流分析の視点からの指導援助の方向
(1) 子どもに対して
1 FCの自我状態の活性化を図る
指導援助者が意識的にFCの自我状態で接する。運動や遊びの中で楽しさを味わわせる。
2 CPの自我状態の活性化を図る。
運動や遊びの中で
・ルール決めて行う。
この時は,少しのことでもいいかげんにせずルールにより判定する。
・指導援助者と勝負をする。
指導援助者はクライエントに対して興味をもたせながら毅然とした態度で試合をする。
3 Aの自我状態の活性化を図る。
面接の中で,意識して,いつ,どこで,なぜ.などを指導援助者自身がAの自我状態で質問し,会話をすすめる。
*養育態度は親の自我状態と関連があるので養育態度への直接のアプローチではなく,自我状態の活性化を図る方向を検討した。
(2) 父親に対して
<CP,A,FCの自我状態の活性化>
*FCの活性化でACを下げる。
家庭で子供と一緒に遊びや運動を行い楽しむ時間を持つようにする。たとえば,指導援助者が子供と遊びや運動などをしている様子を見せ,子供への接し方を学ばせる。次に,父親と子供を一緒にさせる。その際,指導援助者から自然な形で父親の強さ,たくましさなどを子供に知らせる。
(3) 母親に対して
<CP,A,FCの自我状態の活性化>
*FCの活性化でACを下げる。
指導援助者は母親の情緒の安定を図りAでものごとを判断できるように受容的な対応に徹する。
また,父親と同様に遊びや運動に参加させ自由な表現ができるように援助する。
[参考図書]
交流分析 杉田峰康著 日本文化科学社
TA読本 杉田峰康他著 適性科学研究センター