福島県教育センター所報ふくしま No.89(S63/1988.12) -021/038page

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事例を通した教育相談の進め方に関する研究

−予防的な指導援助−

(第1年次)

教育相談部

1.はじめに

 学校における児童生徒の問題行動は,不登校をはじめとして,集団不適応,万引き,不良交友等多種多岐にわたり,そのうえ近年は問鹿が深刻化長期化の様相をみせ,対応の仕方が難しくなってきております。

 このような実情を受けとめ,当教育相談部では過去4か年にわたって,問題行動を持つ児童生徒への指導援助のありかたに関する研究に取り組んでまいりました。その成果として,反社会的行動非社会的行動の背景や発生のメカニズム,及び効果的な指導援助のありかたについてまとめることができました。(紀要第62,67,70,73号参照)

 また,今年度は,問題行動を持つ児童生徒に対する指導援助の実際に当たり,本人や学級,家族等に対して具体的にどのような言葉かけやはたらきかけをしたらよいかについての「手引書」を刊行し,現場の先生方に役立てて頂きました。(生徒指導・教育相談指導資料3“先生はカウンセラー”参照)

 しかし,児童生徒の問題行動が依然として多発していることや,不登校に代表されるように,問題の解決にかなりの期間を要している現状等を考えますと,問題行動が起こってしまってからの指導援助だけでなく,問題行動が発生する以前の予防的な指導援助に力を注いでいくことが,今日極めて重要な課題になっていると思われます。

 そこで今回は,児童生徒の問題行動を未然に防ぐための「予防的な指導援助のありかた」をテーマとして研究を進めていくことになりました。今までの研究の成果を踏まえながら,今年度より2か年継続の実践研究に取り組んでいきたいと考えております。

2.研究のねらいと方法

 第1年次の研究のねらいは,予防的な指導援助に必要とされる要点と基本的な対応についてまとめていくことであります。そのために,

・ 各学校において予防的な指導援助を試みた事例を収集する。

・ 予防的な指導擾助を受けたと考えられる内容を児童生徒に対して調査で求める。

 このようにして得られた事例と調査から,予防的な指導援助の要点と基本的な対応を帰納的に集約し,それに今までの研究や相談の成果を加味して,望ましい予防的な指導援助のありかたの基本についてまとめようと考えています。

 第2年次の研究につきましては,第1年次の研究で帰納的に導きだされた予防的な指導援助の要点と対応が有効であるかどうかを,実践事例を適して演えき的に検証し,予防的な指導援助のありかたを提起していくことを計画しております。

3.研究の経過について

  (1) 予防的な指導援助の定義

 研究の実践に先だち,予防的な指導援助について次のように定義しました。

 予防的指導援助とは,問題行動を起こすことが予想されると診断された児童生徒,または,現在の行為や行動が問題行動に向かって増幅されつつあると診断された児童生徒に対して,問題行動につながる素因や誘因を改善解決または除去することである。
 また,すべての児童生徒に対して問題行動を起こさないように意識づけ,問題行動を起こさないようにする指導援助のことである。

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