福島県教育センター所報ふくしま No.89(S63/1988.12) -022/038page

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 (2) 予防的な指導援助の対象

 今回のプロジェクト研究を進めるに当たって,予防的な指導援助の対象については,治療的指導援助及び開発的指導援助の対象と,次のように区別して考えております。

・ 問題行動を持つ児童生徒を対象とし,その問題の改善,解決を意図して行う治療的な指導援助。
・ 問題行動を起こすと予想される児童生徒を対象とし,その問題を未然に防ぐことを意図して行う予防的な指導援助。
・ 一般の児童生徒を対象とし,その人格や精神的な健康を,より望ましい方向へと推し進めることを意図して行う開発的な指導援助。

 (3) 事例の収集について

 教師に対する調査を通して,予防的な指導援助の事例を収集しました。現在,事例の分析,考察を進めているところでありますが,次のようなことを確かめたいと考えております。

・ どのような問題行動を予想し,指導援助に当たっているか。

・どのような根拠から問題行動を予想しているか。

・ どのような予防的指導援助を行っているか。

・ どのような予防的指導援助を効果的と考えているか。

 また,その中で特に問題行動の予防に効果があった指導擾援助の事例をいくつかとりあげ,診断や指導仮説及び指導援助の実際等について詳しく見ていくことによって,予防的な指導援助のありかたを探っていきたいものと考えています。

 (4) 児生徒に対する調査について

 児童生徒が受けた予防的な指導援助の内容について,小学5・6年生,中学生,高校生を対象とした調査を行いました。

 教師に対する調査同様,結果の分析,考察の途中でありますが,次のような内容が浮き彫りにされるものと期待しています。

・ 自分の身近かに相談できる先生がいるか。

・ 問題行動を起こしそうな気持ちになったことがあるか。

・ どんなことが原因で,問題行動を起こしそうになったか。

・先生からどんな指導援助を受け,その結果どうであったか。

・問題行動を起こしそうな気持ちになったとき,先生にどのようなことをしてもらいたいか。

 以上のような事例や調査から,予防的な指導援助の要点と基本的な対応として,

・ 児童生徒の問題行動の発生をどのようにして予想することができるか。
・ 本人に対する予防的な指導援助をどのように進めていくことが適切か。
・ 家族や学級に対する指導援助はどうあればよいか。

などについて,まとめていきたいと思います。

4.おわりに

 予防的な指導援助は,問題が顕在化していない段階での指導援助だけに,その予想や対応が非常に難しいものと考えられます。しかし,問題行動の発生を防ぎ,問題行動の増加を食い止めるためには必要不可欠のものであります。

 児童生徒の潜在的な問題をいちはやく発見し,問題行動を未然に防ぐための予防的な指導援助のありかたが導きだせるよう,残された期間,研究に力を注いで行きたいと思います。

 なお,研究の成果については,本年度末に研究紀要としてまとめ,各学校に配布する予定でありますので,ご活用いただければ幸いです。

            (担当  小林淑人)


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