福島県教育センター所報ふくしま No.89(S63/1988.12) -023/038page
研修者研究報告(教育研究法講座)
「音読を生かした読み取りの指導」
福島市立三河台小学校教諭 坂 本 恵 子
1.研究の趣旨
(1)研究の動機とねらい
-1-指導の反省から
物語文の指導において,さし絵をもとにした話し合いが中心になり過ぎたり,教師が説明を加え過ぎたりするために,児童に読む意欲や必要感を失わせてしまってはいないだろうか。また,話すことの得意な限られた児童によって学習を成立させてしまってはいないだろうか,と反省する。
文章の内容を正しく理解し,様子を豊かに想像しながら読むことができる授業の中でこそ,児童は生き生きと学習に取り組むことができるだろう。そのためには,児童一人ひとりが自分の力で文章を読むことができなければならない。そこで,拾い読みではなく,語や文をひとまとまりにしてとらえさせ,理解へと発展させていく力をつけるために音読指導をとりあげた。
-2-児童の発達段階から
一年生の児童は,本を読む時に必ず声に出して読むが,音読することで内容の理解をより確かなものにしている。
-3-めざす児童の姿から
・ 一つ一つの文字や言葉に注意して,正しく,はっきりした発音で張りのある声で音読できる子ども。
・ 音読を通して,文章の内容を正しく読み取ろうとする態度を身につけることができる子ども。
以上のようなことから,音読と内容の読み取りを効果的に結びつける音読の方法を探ることにより,確かな読みの力を身につけさせたいと考え,この主題を設定した。
(2)問題点
-1- 声が小さくて,教室全体に響かない。
-2- 読みまちがいが多く,文章に即した正しい読み方ができない。
-3- 口のあけ方が不足していたり,発音が不明瞭であったりする。
-4- 一字一字は読めても,何が書いてあるのか,内容を正しくとらえることができない。
(3)原 因
-1- 児童について考えられる原因
ア 読み方に自信がない,恥ずかしいなどのために十分に声を出せない。
イ 視線の動きが散漫なために,一目で読める文字数が少ない。
ウ 歯が生えかわる時期のために,前歯が抜けていて音がもれてしまう。
エ 何が書いてあるのかを考えながら読んでみようとする意識が高まっていない。
-2- 数師について考えられる原因
ア 何のために音読をさせるのか,具体的なねらいをもたせないままに音読をさせていることが多かった。
イ 音読そのものに着眼した個別的な指導を意識的に取り入れることが少なかった。
ウ 友達の音読のし方を注意深く聞き合い,良いところを認めてやれる雰囲気づくりへの配慮が足りなかった。
2.仮 説
(1)仮説のための理論
学習指導要領の理解領域の指導事項四点を踏まえ,音読を<文字や文章を誤りなく読む技術的な面>と<何が書いてあるかを考えながら読み取る読解的な面>からおさえ,次の