福島県教育センター所報ふくしま No.89(S63/1988.12) -031/038page
アイディア紹介
書道3(ローマ数字)における創作の指導
−感動に根ざした主体的な創作活動を促す試み−
福島県立浪江高等学校教諭 畠山みつ子
1.はじめに
芸術科,書道では,「創造性に富む情操豊かな人間性の育成」をめざしている。とりわけ創作は学習領域の真髄をなすものであるが,生徒は手本を目近に置いて表現技術習得の練習をすることの安易さを好み,創作における構想や表現の過程に対し抵抗感を抱き,素材に対する感動がないまま表現活動に入る傾向が見られる。このような生徒に対し,視聴覚教材や創作カードの活用によって感動に根ざした主体的な創作活動を促し,作品を完成させることによって,成就感や達成感を味わわせることをねらいとし,実践を試みた。
2.実践のねらいと方法
(1)創作活動の原動力となる<刺激→感動→発想>段階において,視聴覚教材(映画「サウンド・オプ・ミュージック」の鑑賞)を導入し,その感想をもとに素材(表現語句)を選定させることにより,感動に根ざした表現意欲を喚起する。
(2)創作カードの活用等によって,構想や表現における模索やつまずきに対し,適切な助言を与え,主体的に解決しようとする態度や能力を養う。
(3)授業の展開において,主体的な創作活動を促すため,書体や書式及び用具について,生徒自らが選択し,創意工夫する課題を与える。
(4)自己の作品の裏打ち及び額装仕上げによって,成就感・達成感を味わわせる。
3.実践の結果及び考察
(1)視聴覚教材の導入による素材の選定教材としてとりあげた「サウンド・オブ・ミュージック」は,生徒が抵抗なく終始くい入るように画面にひき込まれていく様々な要素をもった作品であったこと,そしてそれを施設設備の整った新校舎の視聴覚教室で鑑賞できたことも加わって,大変効果的であった。
この鑑賞での感動をもとに選定した語句の一例をあげると
選定した語句 その理由 「迷う世界に微笑を」 平和な世界を願う人々たちに歌を通して夢と希望を歌ったマリア一家に感動したから 「愛」 マリア一家の子供たちに対する愛
トラップ大佐が地位を捨ててまで守った祖国への愛に感動したから「瞬」 場面一つ一つの瞬間が美しかったし,まばたきするのももったいないくらいよかったから などであり,語句のみを見ると,これまでの素材選定と変わりないものも多かったが,感動をもとに主体的に選んだ素材であるという意識が語句の選定の理由に裏づけられ,素材をどのような書式で表現するか等のその後の構想を練るうえで,適切な方向づけがなされた。
(2)創作カードの活用
創作カードの形式は次のようなものである。
創作カード
年 組 氏名 1語句の選定と 理 由
2書体の選定と 理 由
3書 式 (作品の大きさ)
4表現上の工夫 (1)全体構造
(2)墨 色
(3)用具の工夫
(4)裏打ちと額装
※教師の助言 5作品完成の感想 反 省
※講 評