福島県教育センター所報ふくしま No.90(H01/1989.2) -007/038page
[問題−3]
エイズウイルス,人間の体液の中lこ存在するということがわかりました。ではこの恐ろしいエイズウイルスの伝染力は,インフルエンザウイルスなど他のウイルスと比べてその強さはどうなっていると思いますか。 A…強い B…同じぐらい C…弱い [お話−4]
エイズウイルスが人の体の中は入ると手のほどこしようがありませんが,体の外のエイズウイルスは殺すことができます。体の外でのエイズウイルスの生命力は,血液の中であっても数時間から2〜3日ともいわれています。 エイズウイルスの弱点こついてみると,まず,熱に弱いということがあげられます。56度の熱で30分加熱すると死滅します。アルコールにも弱く50%のアルコールであれば10分で死滅します。塩素などの消毒剤や殺菌剤でも死滅しますから,プールなどで感染することはありません。手指の消毒は,傷やささくれがなければ,石鹸で洗えば十分です。 とにかく,エイズウイルス自体は思ったより感染力の弱いウイルスです。やたらなことでは感染しませんから,普段から日常生活の中で十分予防することができるのです。 ところで最近のエイズ患者の伸び率は,男性同性愛者や薬物濫用者よりも,異性間の性的接触によるものが著しくなってきています。このことは,今後は「性行為感染症としてのエイズ対策」が重点となり,日常生活の中では安全な性行為に努めるということがエイズ予防の中心になっていくことでしょう。 [問題−4]
安全な性行為は,エイズの予防だけでなく,その他の性病予防や避妊の方法とも関連性があることです。 それでは,安全な性行為のための方法として,次の中のどれが最も有効とされているでしょうか。 A…荻野学説の利用 B…ペッサリーの使用 C…コンドームの使用 D…子宮内リングの使用 E…ビルの使用 [お話−5]
今後,性的接触はエイズの感染ルートの中心的なものになっていくと思われます。安全な性行為とは,相手の体液と粘膜に直接触れない工夫をするということです。エイズの感染を予防するには,コンドームを使用することです。コンドームは他の性病の予防にも役立ちますし,避妊のための道具として,正しく使えばかなり効果があります。 未成年者が性行為によってエイズに感染した例は,日本では今のところありません。しかし,日本の高校生の20%が性経験があることを考えると,エイズと無縁だとはいえません。また,今は経験がなくても,いずれは恋愛して結婚することになるでしょう。その時のためにも,エイズの予防法を正確に知っておく必要があります。また,アメリカでは,親から子どもへの感染(母子感染)のケースがすでに数多くみられます。次の世代へのエイズ感染を防止するということからも,正しい予防知識は非常に重要になってくることでしょう。
<資料−4>エイズをめぐる諸問題
3.おわりに
日本人は,一般的にパニックに陥りやすいといわれています。エイズに関しても,1986年〜1987年にかけて,松本市や神戸市などでパニック状態に陥ったことは記憶に新しいところかと思います。このパニックの原因の1つには,人びとのエイズに対する正確な知識がなかったことや情報不足があげられます。今後,このような第2,第3のパニックが起こることは十分予想されます。
また,エイズに関しては,今後,エイズそのものに加えて各種の新しい問題の発生が予想されています。人権問題などはたいへん難しいものになっていくでしょう。このような中,エイズ教育について,保健学習の果す役割や期待感はますます高まっていくでしょう。それに応えるべく,まず我々教師一人ひとりがエイズに関する豊富な知識をもって生徒と共に学んでいこうとする姿勢が大切ではないかと思います。
* 参考文献 *
・エイズってなあに?……監修…厚生省保健医療局感染症対策室
AIDSサーペイランス委員会
・思春期のきみたちヘーエイズの正しい理解− 監修者…北村 敬…教育社
・国民衛星の動向……昭和62年,63年…厚生統計協会
・「授業書」方式による保健の授業 保健教材研究会編…大修館書店