福島県教育センター所報ふくしま No.90(H01/1989.2) -008/038page
所員個人研究−小学校家庭
小学校家庭科の現状と課題
科学技術教育部 武 仲 晴 美
1.はじめに
昭和63年6〜8月にかけて福島県小学校教育研究会家庭研究部会(以下小教研家庭部会と略す)で県内の公立小学校533校の家庭科担当者を対象に「小学校家庭科に関する調査」と題したアンケート調査を行った。その内容は家庭科の教育環境担当者の実態,指導内容及び方法等53項目にわたるものであり,小学校家庭科の実態がほぼ把握できる貴重な資料であった。
そこで,今回この資料を基に,分析・検討を試み,その実態を明確にすることにより,教科のもつ問題点,教科指導上の課題等に考察を加えたいと考えた。
2.調査結果の概要(抜粋)と考察
調査対象校公立小学校551校(分校を除く)中533校(回収率100%)において実施したものであり,県内全域の状況がほぼ把握できたものとして,分析・検討を試みた。
(1) 調査対象校の概要について
1 規模及び地域別内訳(図−1)
大規模校 中規模校 小規模校 無答 計(校) 県北 15
41
51
5
112
県中 22
31
88
3
144
県南 3
11
31
2
47
会津 7
20
61
2
90
南会津 0
2
17
0
19
相双 7
21
22
1
51
いわき 10
32
26
2
70
無答 0
1
5
2
8
計(校) 64
12.0%
158
29.6%
296
55.5%
15
2.8%
533
100%
福島県の場合,小・中規模校が約85%と圧倒的に多い。地域別にみると南会津は約90%が小規模校であり,山村過疎地の地域性がうかがえる。一方533校の約半数は県北,県中に集中している。
(2)家庭科の教育環境について
1 クラスの人数(図−2)
20人以下
21〜30人
31〜40人
41人以上
無答
計(校)
計(校)
127
23.8%
118
22.1%
156
29.3%
51
9.6%
81
15.2%
533
100%
クラスの人数は31〜40人が約29%と最も多く,30人以下は約46%を占める。これは,本教科指導上適正な状態であろう。一方,大規模校を中心に41人以上のクラスが10%弱みられるが,実技を伴う本教科にとって,安全,学習の定着,個に応じた指導などを考えると,授業方法等特に改善の方策を摸索する必要がある。
2 家庭科室の有無(図−3)
調理室 のみ有
被服室 のみ有
両方有 両方無 無答 計(校) 計(校) 294
55.2%
23
4.3%
108
20.3%
99
18.6%
9
1.7%
533
100%
家庭科室有が約80%,家庭科室無は約19%である。被服・食物両方の専用室を備えているのは約20%である。一方,家庭科室がない場合,被服は教室にミシンを運び,調理は理科室と併用している,が最も多い。被服・食物とそれぞれ目的が全く異なる題材を学習するには,両用兼備が必須条件であるが,現況では題材や活動内容も限定されたものとならざるを得ないであろうし,指導法にも特別の工夫が必要になろう。
3 家庭科の63年度予算(図−4)
1〜5万円未満が約27%と最も多い。予算0円は約14%で小規模佼に集中している。予算については,まず担当者の積極的な働きかけを期待したい。一方,不祥,無答が約26%を占めたことは,担当者の意識の低さを物語ることになり本教科運営上