福島県教育センター所報ふくしま No.90(H01/1989.2) -011/038page

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所員個人研究−小学校社会科

個を生かす社会科の学習指導

−コンピュータ利用による学習指導法の改善−

学校経営部 菅 野 由 信

1.はじめに

 近年,学力の向上とりわけ基礎学力の充実が重要視されている。個性の重視や創造性の育成,学び方の習得なども未来を生きる子どもにとっては非常に大切な能力の一つであり,これらの能力を育てるために指導法の改善をめざして研究が進められている。これらの能力を支えるものは,いわゆる基礎基本と言われる学力であるが,現実の学習指導の場で児童生徒一人ひとりに着実に定着させることは大変に難しい。

 そこで,基礎基本の学力の定着のためにコンピュータを利用した学習指導法の改善について述べてみることにする。

2.「個を生かす」ということについての規定

 「個を生かす」といってもその概念は明確ではないが,以下にあげる内容は,「個を生かす」ということについて一つの示唆を与えてくれるものと考える。

(1) 一人ひとりの子どもが目的を持って意欲的に学習に参加している。

(2)学習の方法がわかり,自分の疑問を解決する見通しを持って学習に参加している。

(3)活動の場があり,質の高い学習を確実にしている。

(4)一人ひとりの子どもに合った学習をしている。

(5)一人ひとりの子どもの考えを生かし,子どもの考えを発展させている。また,子どもの考えに基づいて学習の内容について子どもが選択できる状況になっている。

(6)確実に学習が成立していて,一人ひとりの子どもが学習したこと,学習していることに喜びを感じている。

(7)一人ひとりの子どもが学級の中で位置づけられている。

(8)教師や学級の成員に承認されている。

(「個を生かす社会科の学習課題づくり」より)

 これらの内容は,子どもの情意的な側面や,生徒指導的な内容も含んでいるが,ここでは特に学習内容の確実な定着や,成就感,達成感等について視点をあてて考えていきたい。

3.コンピュータを利用した学習指導法の改善

 コンピュータを学習指導そのものに利用するいわゆるCAI的な活用は学校現場へのコンピュータ導入の現状や,ソフトの開発のための時間や経費,教師の負担等の問題からかなり難しいのが実情である。しかし,CMI的な活用としては,成績処理などをはじめとして,多様な場で効果をあげてきている。

 そこで,授業における評価と指導の関連をふまえた学習指導法の改善のために「S−P表」を活用することが有効であると考え,後述のような実践を試みた。

 「S−P表」はテストの結果から,学習状況の傾向を把握し,問題別,個人別に考察を加えるのに通しており,その考察をもとに個人への対応や学習指導法改善のための資料を得ることができる。コンピュータを利用することにより,処理が簡単で確実なため,学習指導の過程で随時行うことができ,指導内容の精選,重点化,学習指導法の修正,強化,個別指導の適切化などの資料を得るのに極めて有効である。

 「S−P表」のソフトは市販されているものもいくつかあるし,当センターで開発したものもあり,いずれも操作は簡単であり,気軽に使えるものである。


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