福島県教育センター所報ふくしま No.90(H01/1989.2) -014/038page
教育相談 紙上カウンセラー講座
教育相談へのいざない(15)
−児童思春期の精神医学−
教育相談部 伊藤 雄二・菅井 一良・玉川 邦夫
今回は,「児童思春期の精神医学」についてお話します。精神医学とは何でしょう。教育相談にとって精神医学を学ぶ必要性はいったい何でしょう。今回は,それらについて考えて行きたいと思います。
1.「児士思春期の精神医学」とは
児童思春期の精神医学とは,児童生徒の心にかかわる諸問題を,医学的な面から,その原因を追及したり指導援助を研究するものです。
2.なぜ児童思春期の精神医学か
よく動きまわる子供をみると,A先生は一郎のことを思いだします。
小学3年生の一郎は,落ち着きがなく,授業中でもじっとしていられない。集会活動でもきちんと整列することができず,たびたび注意を受ける子供でした。
担任のA先生はなんとかして基本的生活習慣ぐらいは身につけさせようと考えていました。機会があるごとに注意し,教え,論しました。しかし,指導熱心なA先生が注意をすればするほど,逆に落ち着きのなさは増していったのです。
そこまでやってきて,A先生はふと不安にかられたのです。精神医学の講義を受けたことのあるA先生の脳裏に,「この落ち着きのなさは,もしかしたら……注意欠陥障害ではないか,……いや自閉症かもしれない,発達遅滞も考えられる,その他の可能性もある……」という思いがいろいろわいてきたからです。
そこで,もっと詳しく様子を知るために,資料の収集をしてみました。
・ 知能偏差値 54
・話を聞いたり,集中して何かをすることが苦手である。
・一人でどこまでも行ってしまうし,やりたいと思えば何にでも手を出す傾向がある。
・誰かが何かをやろうとしていると,出しゃばってきて邪魔をすることが多い。
・課題等最後までやり遂げることができない。
家庭訪問をした時のお母さんの話では,「家では片時もじっとしていません。跳びはね,体をゆらせ,何かをいじっています。何にでもすぐに手をだすのに,いつも最後まではできないのです。元気なのはいいのですが,一郎はすり傷やきり傷が絶えなくて。」とのことでした。