福島県教育センター所報ふくしま No.90(H01/1989.2) -017/038page

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4.専門機関をじょうずに利用するために

 A先生が一郎の指導に成功したもう一つの大きな要因に,専門機関を知っていてうまく利用したことが上げられます。ここでは,専門機関のじょうずな活用の仕方を考えてみましょう。

(1) 学校では事前に,それぞれの専門機関の所在や事業内容のアウトラインをよく知っておく必要があります。それを図や表にしておくと緊急のときなどとても便利です。

 ○関係機関マップ

○関係機関マップ

 ○おもな専門機関の指導,治療,研究内容

専門機関

機関の内容

教育センター

・子どもの発達や教育上の全般的相談に応じる

・相談内容(登校拒否,いじめ,学業不振,進路適性,心身障害,非行,性格行動等)

・カウンセリング,遊戯療法,心理検査等

・教職員の研修も行なっている

児童相談所

・18歳未満の児童・生徒を対象とする

・相談内容(養護相談,非行相談,育成相談,心身障害相談等)

・保護機能を合わせ持つ相談活動(一時保護,児童福祉施人所措置,里親への依託等)  

養護教育センター

・心身に障害が認められるか,又はその疑いのある幼児,児童,生徒を対象

・相談内容(教育相談,就学相談,検査・観察)巡回就学相談も実施している

・養護教育関係教職員の研修も行なっている

(2) 児童生徒の行動に精神医学的な疑いを持ったなら,早い機会に,教育センター等に電話で相談されてはいかがでしょう。

(3) 医学的な対処の必要性を感じたならば,すみやかに校長の判断を仰ぎ,保護者の同意を得たうえで,専門機関に依頼するのが望ましいと思います。

(4) 専門機関との連携を勧めるに当たっては,保護者や本人に学校から見放されたとか,溝ができた等の感情を抱かせないように十分注意し,「本人の将来のために連絡を取り,協力し合って行く」という姿勢を示して,安心感を与えるような配慮が必要です。

(5) 専門医のことですが,精神医学とは言っても児童思春期の精神医学は特殊な分野ですので,教育センター等とよく連賂を取り,児童思春期を専門にしている医師を選ばれるのが良いと思います。

(6) 時には,「保護者や本人が専門医での診察をいやがる場合もあります。そんなときには,教育センター等での相談を勧めるのもひとつの方法です。

(7) 専門機関に任せ切るだけでは問題の解決にはならないことが多々あります。時折,専門機関と連賂を取って,専門的な助言をいただくとともに,本人の改善の様子を認め励ますなど,学校としての指導援助に当たって行くことが大切ではないでしょうか。

(8) 「ためしにやってみるか」というような実験的な試みで専門機関に送ることのないようにしたいものです。もっと学校としてやれることはないのか十分考えてみることが必要なのではないでしょうか。

 教育相談を効果的に進めるためには,学校でやれること,学校ではやれないことをしっかりわきまえることが重要だと思います。そのためには児童思春期精神医学の基礎知識や専門機関との密接な連携が欠かせないものであることをど理解いただけたでしょうか。

 [参考文献]

 ・ DSM−3(ローマ数字) 医学書院

 ・ DSM−3(ローマ数字)ケースブック 医学書院

 ・ 子どもの精神病 星和書店

 ・ 多動・情緒不安定 黎明書房

 ・ 月刊生徒指導 学事出版

 ・ 先生はカウンセラー 教育センター


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