福島県教育センター所報ふくしま No.91(H01/1989.6) -004/038page
(4)研修の高まりとひろがりを
自らよりよい教師を指向すればそれに応じて研修の度も高まるのでなければならない。しかも教師の質は教師その人の人間性の豊かさに基盤をもつものであるから、広く深く人間性を洗練しなくてならない。だから教師の研修は、教職の実務的内容にとどまるものであってはならないのであって、豊かな人間性を養うひろがりを必要とする。しかもそれは、人類史の創造に貢献する程の「学び」を遂行することである。この意味で、子どもとの教学者であり、かくして子どもと共に育つ共育者となることでなければならない。そうしてこの研修は、現職の枠をこえて、障害研習への展開を現実化することにならざるをえない。
2.今なぜ現職研修の充実か
現職研修が実効をおわめ、教育効果があがれば、この現職研修は充実したものと言いうる。ところで、教育効果を結果するに不十分、あるいは教育状況に望ましくない様相が現存するとなれば、それは現職研修の責任だけでは勿論ないけれども、しかし現職研修の責任はまぬかれることはできない。つまり学校教育の問題状況に関わって現職研修には責任があるということである。
さて今日の学校教育の状況は、社会国家の教育に対する対応をふくめて、一大教育改革が論議され、計画され、一部実践にのぼっている面もあるという次第で、重大な危機に際会しているというべきである。この危機を新しい始まりとして新世紀に正しく生き抜く子どもたちのための教育を展開すべきであり、現職研修はこのことにこたえるべきである。きわめて具体的には、新教育課程による授業改善が実効をあげていかなければならないときである。一方学校の現場においては、孜孜として自主研究に努めている向きもあるが、危機意識も乏しく、研修の本来性によるのでもなく、研> 修の機会はなるべく避けるようにしている存在もあるというのでは、最も安定した職種の教職に安逸を貪っているとの非難もあがりかねないのである。何としてもお互いこころをひきしめて現職研修、の充実を成し遂げなければならない。
3.現職研修の充実のために
紙幅の都合上二三メモ風にのべることとする。
(1)教師一人一人の自覚
現職研修の充実は研修の本来性からして教師一人一人の自覚が根本である。この際つぎのことが重要要件である。
1(丸囲み)つねに教育の本来性に省みること。
2(丸囲み)教育状況における今日的課題を的確に認識すること。
3(丸囲み)相互協力・補完の生き方を実践すること。独善にはしらず、相互に生かし合いつ教育効果をあげるためである。教師間で足を引き合うなど愚の骨頂である。なお教師養成のあり方にも問題がある。裁判官養成のもつよき面などを参考する要がある。
(2)学校経営の刷新
現職研修の充実を目ざす学校経営においては、校長の指導性がたしかであって、その上に立って研修計画が十分練り上げられ、たえず評価反省して教育効果をあげるよう努めなければならない。
そのために、全教職員の主体的能動的な協力態勢が形成されるのでなければならない。具体的には県教育センター学校経営部の「学校の経営過程における現職研修のあり方に関する研究」が大変よい参考資料になると思う。
(3)教育行政のあり方(管理職をふくめて)
1(丸囲み)いわゆる制度としての研修内容を魅力あるものにする工夫を十分つくすべきである。
2(丸囲み)研修の実をあげている者(学校・個人を問わず)に対する正しい評価と適切な処遇を実行し、研修意欲をしぼませるようなことがあってはならない。
3(丸囲み)総じて、教師の心とからだにおける「ゆとり」がなければ、研修の実はあがることはないが、管理職にある者、行政にたずさわる者が如何に対処するか、根本的に重要なことである。
(4)現場の授業研究のあり方に関して
1(丸囲み)研究の構造性をたしかなものにしなければ、効果はあがらない。全体の主題とその追求方策と各教科や学科のあり方が脈絡の十分でない場合がしばしば見られるのは残念なことである。
2(丸囲み)他校の研究との交流をさらに工夫する必要がある。
以上意を尽くさない記述であるがご批判を請う。