福島県教育センター所報ふくしま No.91(H01/1989.6) -009/038page

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所員個人研究 −(教育相談)

教育相談における心理検査の活用


教育相談部  玉 川 邦 夫


1.はじめに
(1)子どもの理解
 子どもの心身共に健全な成長を願うとき、教師は一人一人が持っている能力や個性を引き出し伸ばしてあげることを大切にする。また。誤解や思い込みをなくすために、日常の教育活動の中で愛情を持ってかかわり合おうと努力する。これが、「子どもを正しく理解しよう」とする教師の姿である。
 教育相談もまた、子どもを「理解する」ことからはじまらなければならないことはいうまでもない。
 その理解の方法としては、観察、既存の資料、面接、心理検査等があるが、現場での「心理検査」の活用については、十分とはいえないのではないだろうか。
 問題行動の原因は非常に複雑で多元的である。よって、外観の裏に隠されている子どもの世界を客観的に理解することはなかなか難しい。そこで「子ども理解」の一つの方法として「心理検査」の活用が考えられる。
(2)研究の構想

 ここでは、現場の先生方にも比較的手軽で、しかも効果的な活用のあり方について、3つの観点から考えてみることにした。
 1.(丸囲み)心理検査の機能、活用、組み合わせ等についての理解を深める。
 2.(丸囲み)「不登校」における、心理検査から浮き出された本人や親の特徴について考察していく。
 3.(丸囲み)教育相談のどの過程で、どのように活用するのがより効果的かを、事例を通して臨床的に研
究していく。

2.心理検査
(1)心理検査とは
  「人間の個人差を明らかにするために、客観的な、標準化された手順によって、行動(言語的又は非言語的反応)の見本についての測定を行い、各個人の心的特質を捉えることである。」
(2)心理検査の機能
「予診的機能」  ある検査結果に基づいて、同様の状況においては同様な気持ちや行動をとるであろうとい予測ができる。
「診断的機能」  個人内の能力や特性を細かく測定し、個人を客観的に理解することができる。
(3)心理検査の活用
 一般に次のような目的の応じて活用する。
 ・ 問題がありそうに思われる点にさぐりをいれる。(予診・診断的)
 ・ 面接や観察によって得られた資料の吟味や得られなかった資料の収集をする。(診断的)
 ・ 短期間に結論を出す必要に迫られている。(予診的)
 ・ 本人や親に知的な情報を与えることが相談の効果を高められると考えられる。(予診・診断的)
 ・ 指導援助の効果や子どもの変容を知る。(診断的)
 ・ 今後の児童生徒の考え方や行動の状況の予測をする。(予診的)
(4)テスト・バッテリー
 一種類の心理検査だけでは、測定範囲が限定されているので、おのずから子どもの理解の内容に限界が生ずる。そこで、何種類かの心理検査を組み合わせ(テスト・バッテリー)て使うことが必要になってくる。
(5)検査結果の伝え方
 結果を本人や親に伝えるか、伝えないかについては、それによって、どのような教育的効果が期

  

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