福島県教育センター所報ふくしま No.91(H01/1989.6) -011/038page
3第七回目の面接
本人は「うまくやっていけない」とか「このままでは何をやってもだめだ」と沈んだり、こだわりが依然残っていたので、母親から幼児期の様子を聞いてみた。すると、小さいころ「落ち着きがない」「同じ事を何度も繰り返す」「異常なくらい物覚えがよい」などから、自閉的傾向のあることが分かった。そこで、「いつまでもこだわった物の考え方をする」のはこの子の性格であることを理解してもらい、一層受容的かかわり方が大切であることを母親に話した。
YG性格検査の結果や生活の様子から、抑うつ的傾向が感じられるが、何が大きな要因となっているのか「CMI健康調査」によって調べることにした。
資料4〔本人のCMI健康調査〕
・怒りを持っているが性格からしてその発散がされていない。
4第九回目の面接
徐々に気持ちが落ち着いてきて、3学期頃から学習塾に通えるようになってきた。しかし、相変わらず父とのコミュニケーションはなく、心の距離が感じられた。そこで心身共に健康な発達を遂げていくためには、父親像を学ばなければならないことを話、父親の来所を求めた。
仕事の都合で度々これないということで、心理検査をその場で実施し、解釈した。
(親子関係診断テストの結果は省略)
資料5 〔父親のエゴグラム〕
・母親に似ている。また小さい頃から大人の会話が多かったようだ。
両親が共通理解に立ち、本人に対して受容的、支持的にかかわりことが出来るようになってきてからは、本人も徐々に今までのこだわりから解放されてきた。
また、学校からの温かい配慮もあって卒業することができ、無事、3月に高校入試を突破することができた。
4.おわりに
「誰も私のことなんかわかってくれないよ」と心を固く閉ざしている子ども。「なぜ、学校へ行けないんだろう」と自分でさえ分からないで苦しんでいる子ども。そうした子どもを理解することは大変である。
教育相談では、そうした本人の「自分で気づいていない部分」(無意識層)にアプローチする場合が多い。すなわち、問題行動はその「自分で気づいていない部分」が原因となり、そこへの指導援助が解決の糸口になることが多いからである。
心理検査の活用によって、その「気づかない部分」に気づくことができ、適切な指導援助を進めることができたように思われる。
今後は、子どもを総合的、客観的に理解していくために、さらに効果的なテスト・バッテリーの在り方について研究していきたい。
◇参考文献◇
学校教育相談入門 福島県教育センター
研究紀要(175集) 千葉県教育センター
登校拒否児 新曜社
性格診断マニュアル テクノ
相談心理学 朝倉書店