福島県教育センター所報ふくしま No.91(H01/1989.6) -012/038page

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所員個人研究 −(高等学校生物)

酸素の触媒作用の測定


−気体測定管を用いた定量化への試み−


科学技術教育部  塩 田 義 隆


1.はじめに

 生命現象の特徴の一つである物質交代・エネルギー交代は、常温、水溶液中の状態でいつもの複雑な化学反応から成り、調和のとれた連続する反応系であり、現代の科学技術をもってしても完全に再現できない部分が多い。それは生体内の化学反応には、酸素と呼ばれる生体触媒が存在するためである。

 酸素は、【連続性と遺伝子】の分野で酸素の生成、【物質交代とエネルギー交代】の分野で性質やはたらきについて指導している。

酸素に関する実験はいろいろな指導例があり、基質特異せい、触媒作用、温度やpHの関係について定性的な検証実験をに行っている例が多く、定量的な実験は少ない。

触媒については理科Iで学習しているが、実験で指導している例は少ない。酸素の重要なはたらきである触媒作用について、定量的な実験方法を考えてみた。

2.研究の趣旨

酸素の触媒作用を定量的に取り扱える実験方法を工夫する際、次の点を考慮した。

1触媒作用に関係する科学反応は、教科書で使用され、反応も単純で身近なものとする。

2複雑な実験装置や手順を必要とせず、簡易な実験器具を使用する。

33〜4人程度のグループでできる共同実験とし、定量的な実験を行う場合の方法や手順を身につけさせる。

4生徒の実態に応じられるよう、基礎的な実験も工夫する。実験結果をグラフ化し、定量的に考察できるようにする。

3.実験の概要

研究の趣旨をふまえ、実験の内容と方法を決定した。

1実験で利用する酸素の種類と材料

酸素名 カタラーゼ(分子量 約23万)

 カタラーゼは動物の肝臓などに多く存在し、高価で保存も難しい。高校生物のカタラーゼの実験は定性的なものであり、ブタやウシの肝臓片で代用しておこなっている。

 今回の実験は、酸素液として、ブタの肝臓片の抽出液を利用し、定量的な測定ができるように試みた。

2実験で利用する化学反応と基質について


2H +O →2H O+O


過酸化水素は分解すると水と酸素になる。このとき発生する酸素は酸化力は強く、3%程度の過酸化水素水はオキシドールと呼ばれ家庭用消毒液に利用されている。

過酸化水素は室温の状態のとき、緩やかに分解し、酸素の気泡はほとんど見られない。生体では過酸化水素は物質交代の過程でつくられるが有害なのでカタラーゼにより、速やかに分解されている。

過酸化水素について、小学校では5年次のりか分野の燃焼の項で、中学校では理科第1分野の気体の捕集で学習している。小中学校とも、過酸化水素水を分解させて酸素を発生させるのに二酸化マンガンを加えているが、触媒のはたらきには触れていない。

3実験器具について


今回使用する実験器具は気体測定管を除いて。、小・中学校およびこうこう1年次の理科Iなどで何回も使用経験のあるもの



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