福島県教育センター所報ふくしま No.91(H01/1989.6) -022/038page

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プロジェクト研究報告

事例を通した教育相談の進め方に関する研究


一予防的な指導援助(第1年次)一
(その1)


教育相談部


1.研究のねらい

 問題行動が顕在化した時点では,多くの要因が関係し合って,その指導援助には相当の期間とエネルギーを必要とする。ゆえに,問題行動に至らないようにするためには,問題行動につながる各要因の有機的な結合以前に予防的な指導援助が必要となる。本研究は2カ年にわたる継続研究の第1年次であり,第1次の研究のねらいを
予防的な指導援助の要点と基本的な対応について明らかにするとと, とした。

2.予防的な指導援助に関する碁本的な考え方

 「予防的な指導援助」とは
 問題行動を起こすことが予測されると診断された児童生徒,または,現在の行為や行動が問題行動に向かって増幅されつつあると診断された児童生徒に対して,問題行動につながる素因や誘因を改善,解決または除去すること 、である。



予防的な指導援助の研究対象児童生徒
3.調査にみる指導援助の現状と課題

 調査対象者(小・中,高)

 児童生徒・3,569人'教師936人

(1〕児童生徒の問題行動に関する意識アンケート
反社会的鼓動につながる気持ち
  気分がムシャクシャして、おもしろくない。
  誰かにやつあたりするか、なにか悪いことがしたい。
  どうせ人は、悪いことをしているのだから。
非社会的行動につながる気持ち
  自分の気持ちをわかってくれる人はいない。
  自分がとてもみじめに思え、とてもさみしく、つらい。

問題行動につながる気持ち



アンケート結果 アンケート結果

 上記の結果から児童生徒の気持ちを理解することの重要性を認識させられるが,別の調査では,このような気持ちに気づいてもらえたのは30%にもみたないという結果が明らかになっている。

 

(2)問題行動に至らなかった指導援助の例を調査した結果,次のことが明らかになった。

 

  1.(丸囲み)問題行動を起こすと予想した根拠は,子供のしぐさ,表情などのさ細な変化であった。   常に身体面,行動面,情緒面,考え方,生き方等に目を向けることが必要である。

 

  2.(丸囲み)全体の8割近くの事例で,何らかの指導計画を立てている。資料の収集と診断,指導    仮説等が重要である。

  3.(丸囲み)本人への指導援助等の他,家庭への協力,校内での指導体制などの重要性も浮き彫り    にされた。

(3)児童生徒の望む態度としては,「気持ちを分かってくれる」「楽しませてくれる」「励ましてくれ る」など,共感的に理解し,情緒の安定を図ることを中心として指摘されているが,教師側が必要と考 える指導援助でも,「受容」「励1まし」など同様の結果となっている。

4.今後の予防的な指導援助の方向性

「発達特性の理解」   「受容的共感的な姿勢」   「情報収集と指導計画」   「本人や家族への援助」   「学級作り」 などが考えられる。


(文責 佐久間益郎)



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