福島県教育センター所報ふくしま No.92(H01/1989.8) -011/038page

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所員個人研究 _(小学校体育)

小学校における保健

学習学習指導部  西 牧 裕 司

1.はじめに

 小学校の保健学習が教育課程に位置づけられたのは,ほぼ30年前のことです。よく聞く話ですが,「小学校の保健の授業で何を習ったか、ということをまったく覚えていなかった。」,「生活一般で徳目として教えられたような気がする。」といった状況であると思います。

 つまり,科学的な保健認識を育てる学習活動,すなわち保健の授業はいまだに育ちそびれたままであるといってよいのではないでしょうか。

 保健学習はどの程度学習されているのでしょうか。ある調査(1985年)では,学習指導要領に示されている「2単元を6〜10時間指導」したのは,わずか10%であります。「実施せず」は30%であり,「学級指導と混同」した形での実施が38%であったという報告があります。これらをみても計画通りには実施されていないのが現状だろうと思います。

 こうした保健学習に対する固定観念から脱却することが必要であると思います。すなわち,授業を組織する教師自身が「つまらない保健授業」,「雨ふり保健」といった固定観念をとりはらい,「子どもたちが生き生きと目を輝かすような保健授業」を創造することが大切であると思います。

 そのためには,どのようなことに留意していけばよいかを述べてみたいと思います。

2.保健学習と保健指導の位置づけと問題点

 図1のように保健学習(保健授業)とは,学習指導要領に基づいて実施されている「教科」の学習であり,保健指導とは,「特別活動」などの学習であります。

 保健に関する教育は,すべての教師がなんらかのかたちで関与すべきであり,「あらゆる機会」を通じて努力することが大切だと思います。実際の指導場面において,知識・理解と習憤形成・しつけという目標の混乱や,保健学習と保健指導の違いはなんなのかなどが明確でないためにうまく機能していないといえるのではないかと思います。

図1 保健体育の特性と教育課程における位置づけ

図2 保健教育における保健学習と保健指導の特質

  保健学習 保健指導
目標・特性 保健の科学的認識(判断・思考能力)の発達の助長
・現在よりも将来を見通した健康問題に関する知識の習得
具体的な問題に対処できる実践的能力の育成
・当面する健康問題に対する態度や習慣の育成
内容 一般的・基本的な概念
・学習指導要領の内容
・指導時数に規定がある
当面する健康問題中心
・内容や時間数は学校が定める
教育課程における位置 教科
・体育
特別活動など
・学級指導、学校行事等
方法 保健科教育法の手法を用いて計画的に指導を行う ガイダンスやカウンセリングの手法を用いて継続的に指導を行う
対象 学級集団 集団または個人
担当者 学級担任 学級担任・養護教諭など

 そこで,第1学年から第4学年までの学級指導を中心とした保健・安全に関する指導において指導された事項を,第5学年,第6学年の保健学習において保健の科学的認識を育てる学習活動へとつなげていくことが必要であると考えます。したがって,学習活動を進めるにあたっては保健学習と保健指導の特質をよく理解し,指導の成果が十分高められる配慮が必要であると恩います。(図2)


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