福島県教育センター所報ふくしま No.92(H01/1989.8) -015/038page

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   妹小学校4年
   祖母68才無職以上5人家族
  母親への電話連絡
   

夏休み中,「お母さ一ん!」と甘えるような態度が見られた。始業式の3日前より腹痛を訴えていたので医者に見せたが,異常は見られなかった。


学年会で協議された事項


・保護者からの積極的な連絡がないことから問題意識を持っていないことも考えられるので,担任による家庭訪問を早急に行う。


・問題の背景や要因が何かを知るために,資料収集を行う。(家庭環境や性格行動面など)


・さしあたって,家庭で強い登校刺激(送り迎え)をしてもらい,無理な場合は担任が朝の訪問を行う。とにかく,最初の一週間は強い登校刺激を与える。


・第二回学年会を一週間後に持つ。担任はその間,資料集めと家庭訪問をする。



A君の性格・家庭環境

 結局,不登校の初期段階という判断で行った登校刺激は失敗に終わりました。判断が甘かったのかも知れません。さっそく,指導援助の方針を修正するために第二回学年会をもちました。

第二回学年会で報告・確認された事項

・家庭訪問において家族のことを聞くことには,担任としてかなり抵抗があったが,意外にも質問に対して協力的に答えてくれた。(母親と祖母が対応)


・父親は頑固ではあるが,本人の養育は母親任せ。本人と遊ぶなどの接触は少ない。しかし,本人を長男として期待している。祖母には頭が上がらないようだ。


・母親はやや神経質で小言が多く,生後1年から託児所に預けて,甘えさせたことはないという。(当時は共働きであったが,祖母とは別居)父親に対しては,「もっと,しつけを積極的にしてほしい。」という不満があるように感じられた。厳しくしてきたので,手がかからない子であったとの自慢話も聞かれた。


・祖母も母親も,「女の子は別」との考えからA君より妹の方を甘やかしている感じがする。


・土曜日の昼食時は自由な班編成で食べさせていたが,A君にとっては相当いやな時間であったことが,母親からの話で分かった。


・その他,教科担任からの情報などを得た。

 これらの資料を中心に,問題点の所在について活発な意見交換,資料の整理が行われました。

なぜ、A君は・・・・

 A君は幼児期から母親のスキンシップが得られず,愛着行動もない状態で育ってきました。周囲からは問題のない静かな子として見られ,頑固な父親の過剰期待にも応えようとしてきたのでしょう。自己主張を許されないような環境の下で,いわゆる「素因」としての内向的性格が徐々に強められていったのではないでしょうか。それに加えて,母親にやや神経質なところが見られ,過干渉的な対応がなされたため,「自立心」の育成が十分ではなかったのでしょう。

 このようなA君が,学級での孤立,特に給食時の自由編成班に入ることができなかったことが,「誘因」の一つになって「不安」を持ち,不登校に結びついたと考えられます。母親への甘えも不安解消の一つだったといえるかも知れません。

 また,生徒指導上の今までの取り組みについての反省点も,学年会で取り上げられました。主な内容は次の通りです。


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