福島県教育センター所報ふくしま No.92(H01/1989.8) -019/038page

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プロジェクト研究報告

基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究


一小学校国語科の実践から一

学 習 指 導 部

 国語科では,下表の研究仮説に基づいて5年生の理解単元と表現単元の二つを通して実践した。実践への方策から下ろした具体化の方向の手だてを,表現単元「想像を広げて」について述べる。

 1.「よさ」の把握

 第一段階では,「性格・行動」,「学習全般」,「読書傾向」の三つの観点から,親,教師,児童自身の三者の目を通して客観的にとらえた。

 第二段階では,「国語科学習についての興味・関心」,「学習活動・形態の好み」の調査をした。

 これらの調査結果を「個人カルテ」に累積記録し,併せて単元の基礎的・基本的な内容の精選をした。基礎的・基本的な内容を定着させ,「よさ」を生かす視点として,「構想表」の活用を図った。

 構想表の中で,「よさ」を生かす観点としては,「題材に対する見方や考え方」,「自分に合った書き方」とした。基礎的・基本的な内容の観点は,「登場人物」,「時代」,「場所」,「中心になる出来事」,「あらすじ」,「題名」とし,それぞれを作品に照らしてチェックする欄を設けた。

[国語科研究仮説]

国語科学習指導において.児童一一人一人の持っている[よさ」を把握し.学習内容とのかかわりて教材に対する見方や考え方、興昧・関心を生かす指導の在り方を工夫すれば、自分なりの「よさ」が意識され、さらに「よさ」が生かされることにより基礎的・基本的な内容を身につけさせるとともに一人一人の「よさ」を伸ばし、育てることができるであろう。

実践への方策 実践への具体化の方向
・児童のもっている「よさ」の把握 ・児童の「よさ」を把握するために、「教師」、「親」、「児童」の三者から段階を分けて客観的に調査する。
(1) 第一階の「よさ」の把握−「性格・行動」、「学習全般」、「読書傾向」の三つの点から
               「よさ」をとらえる。
(2)第二段階の「よさ」の把握−「国語科学習についての興味・関心」・「学習活動・形態の好
                み」からとらえる。
・教材に対する見方や考え方を生かす ・領域に応じて、対象についての児童の具体的な見方や考え方が表れる資料を準備する。
・単元で構想の観点と児童一人一人の題材に対する見方が盛り込まれる「構想表」を準備する。
・興味・関心を生かす指導 ・領域に応じて、対象を選択させたり表現方法を選択させたりする。
・表現しようとする題材を自由に選択させるとともに、書き表し方も工夫させる。
「よさ」の怠慢化 ・学習内容、活動の具体的なものから、観点を設けて自己評価、相互評価、教師の評価を通して「よさ」を意識化させる。
・表現領域では、「作品に対する感想」、「構想表の観点」、「題材に対する見方や考え方」の三つの観点から見る。
・「よさ」が生かされる指導の工夫 ・対象についての児童の見方や考え方の「よさ」が生かせるような指導の手だてを工夫する。
・「構想表」の中に題材にたいする見方や考え方を明確にできる欄を設けて記述させたり、評価欄を工夫したりする。
・基礎的・基本的な内容を身につける ・領域や単元でねらう基礎的・基本的な内容を意図的に取り上げて定着させる。
・「構想表」の中に基礎的・基本的な内容である構想の観点を意図的に盛り込み、定着を図る。
・「よさ」を伸ばし、育てる ・学習してきた内容を振り返ったり、次の学習に役立てたりすることを通して一人一人「よさ」を伸ばす工夫をする。
・グループごとに文集を作成させ、他のグループと交換させることによりクラス内で「よさ」の認め合いをさせる。

2.「よさ」を生かす指導

 「構想表」の中にこの単元で学習すべき基礎的・基本的な内容(構想の観点)を盛り込み,題材に対する自分なりの見方や考え方を書き込めるようにした。表現過程で,同じような題材を選んだ児童どうしのグループを編成し,その中でお互いの題材に対する見方や考え方を深めさせた。

3.「よさ」の意識化

 把握した「よさ」を作文学習の中に生かしながら授業を進めた上で,グループの中でお互いの作品の読み合いをさせた。

「よさ」発見カードの例

*友達の作品を読んで,「よいところ」をたくさんみつけてあげましょう。

書いてあげること (6)グループ名前 F.Sさん
ア.作品に対する感想 メダカの大きさやお話がとてもおもしろい。
イ.構想表の観点が作品によく表れているか 構想表とお話がとてもおもしろい。
ウ.あなたの見方や考え方、書き方が作品によくあらわれていたか 音の表し方、書き方がとてもFさんらしい

「作品に対する感想」,「構想表の観点と作品」,「題材に対する見方や考え方と作品」という観点から,「『よさ発見カード」を用いて児童どうしの相互評価,自己評価,教師による評価を行い,具体的内容や活動を通して「よさ」の意識化を図った。

4.「よさ」を伸ばし、育てる指導

 学習のまとめとして,グループごとに文集を作成させた。グループ間で文集の読み合いをさせ,クラス全体で「よさ」を認め合う場を具体物を通して意図的に設定した。

(文責 関 博之)


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